第9章 花いちもんめはしたくない
「あっという間に全員捕まって終了だったよ、そんで言われたんだ
『そんな気持ちは、そのまま持っていたらいい。結果は大事だけど、砂にまみれる事も大事だ』ってな」
「砂に、まみれる?」
「ウィルさんが軍にいた時の経験らしいんだけどな。
始めの頃は毎日どんなに完璧に支度をしても5回に1回は上官から難癖をつけられるんだって。
そして罰として海に入って砂の上を転がされて1日その姿のまま行動させられる。
理不尽と悔しさを身に纏いながら心を強く持て。
それをどう取るかで今の自分の器が分かる、っていう教えだと自分は思ってたって。
世の中は理不尽で溢れていても未来は少しのことで変わる。今を受け止めて育て。
そう言われて何となくウチラも納得したの。
で、物間がやたらとイチに構いだした。
嫌味な態度とらないとやってらんない物間にしたら、ニコニコ構ってくれんのも嬉しいのかなって、私等は思ってんだけどね」
そう言って拳籐は後ろをチラリと見てはにかんだ。
「んでさ、見た所イチが自主練付き合ってくれるんだろ?B組も忘れないでくれって、私は言いにきたんだ」
「―― という事さA組!」
イチを抱えながら物間は拳籐の横に来ると、緑谷と切島に向かって声高々に物申す。
「だから明日は僕等B組が、イチを街に連れて行く!ついて来たけりゃ君達は後ろから指を咥えて勝手につ…フッ」
「だから、うっさいつーの。
じゃ、A組邪魔したな。イチ、またな」
「うん、一佳、寧人バイバイ」
少し変わったクラス交流。
これもヒーロー科ならではなのだろうか。
2クラスしかないが、意外とクラス交流って少ないんだよなぁと、緑谷と切島は2人の後ろ姿を見送って思ったのであった。