第1章 序章 戦闘技術
「あ、あの質問じゃ無いんですけど、彼……あのイチくんって」
「イチ?あぁ、あそこにいるよ」
指差す方向を見やると、2階の見学席で頬杖をつきながらコチラを見ているイチがいた。
「あ、いやその、見ていて大丈夫かなって……」
「と、いうと?」
「その、訓練でも血が出たりする場合があるし、見慣れない子には怖かったりしないかなって。
僕たちと2つしか変わらないけど彼大人しそうでしたし、大丈夫かなって思って、あの……」
オドオドしつつも心配する言葉が次々にでたが「あ、でも海外の方がヒーローの戦いとか見慣れてるのかな……?」
次第に自問自答し始め自信が無くなったのか緑谷はどんどん挙動不審にもなっていった。
しばらくして含み笑いと共に、大きな手が緑谷の頭に置かれる。
ビクッ、として自分を見上げる緑谷に「いや、出久は思った通り素直ないい子だと思って、つい、ね」と声の主は感想を漏らし、そのまま犬を撫でるように緑谷のもさもさした頭を撫でた。
「あの子観るのも好きなんだ。
大丈夫だよ、心配してくれてありがとう、心配ついでに話しかけてやってくれ、きっと喜ぶ」
会釈をして走って戻る緑谷の背中に「出久!【くん】は、いらないよ」と声が響いた。
振り返りながら返事をした視界の端に再びイチを捉える。
(後で話しかけよう)
そう心の中で決めると【地獄の我ーズブートキャンプ】をする為に自分の場所に急ぐのであった。