第1章 序章 戦闘技術
「よし皆いるね」
広い雄英の設備の1つに1−Aの生徒は集められていた。指先で数を数え終えると、先程のスーツ姿からタンクトップにカーゴパンツ姿になった男は、低いがよく通る声で話し始める。
「改めてヒーロー仮免許まで皆の指導をします、ウェンウィルです。気軽にウィルと呼んでください。
朝軽く紹介されたけど陸軍に所属していました。今は引退しているけどね。
時間も少ない、手っ取り早く済ませよう。
個性は【カウンター】相手の攻撃を数倍にして返す。
威力に耐える為にも体を鍛えていないと自滅するからこんなにデカくなってしまったわけだが…鍛え過ぎはオススメしないかな。
さて、今日はA組で明日はB組と、1日置きに授業する訳だが、とりあえず合宿でしていた個性の訓練を各自してもらう」
「――宜しいでしょうか!」
凛とした声と共に手をすばやく挙げた飯田に「天哉だね、どうぞ」と低く通る声は返事をした。
「ウィル先生は体術に特化した授業をなさるというお話でしたが、個性を伸ばす訓練を行うのは何故でしょうか!そうなると校長先生のお話から脱線していると感じるのですが!」
キビキビ答える飯田を見ながら、顎に手を当て一つ頷き答える。
「いい質問だね天哉。
確かに私は戦闘技術を伸ばすと言ったが、あいにく身体が一つしかない。
体育祭のVTRなどは見たが今の君達の状態は見ていないんだ。
【個性に頼りすぎないように】だが【個性ありきの姿】を見て今の君達を知り、その上で足りない技術を備えてもらえる様にしたいと考えている。
もちろん1人ずつ軽く手合わせもするよ。
猿夫なんかは武術が得意なんだよね?君は基本があるから手合わせするのが楽しみだなぁ」
突然目配せをされたThe普通の尾白猿夫は驚きながらも、嬉しそうな顔をした。
その横で葉隠透は「よかったね!尾白くん!」と透明な腕を振っている。
何とも微笑ましい光景である。
「さて、他に無い様なら各自用意して始めようか!」
ドラム缶や簡易トイレを各々が用意をしていると、緑谷出久は男に駆け寄った。
短く整えられた顎髭、ツーブロックの少し長い黒髪を1つに結んだ男は、体格もだがどことなくオールマイトに似た雰囲気がある。
どれ一つとっても目を引くのだが、間近で見る鮮やかな黄色の瞳は特に目を引いた。