第8章 僕達の距離
「お、爆豪おかえり。飯、冷蔵庫に入ってっからな」
「あぁ、分かった」
それぞれが部屋に戻ったり、出たりした寮内。
緑谷と同じく支度を終え降りてきた切島と爆豪の声は静かなホールに良く響いた。
その声を無理やり振り払うかのように、緑谷は頭を左右に振るうとそのままの勢いでドアに手をかけた。
「なぁ緑谷!今さ、爆豪に聞いたんだけど、イチ後でこっち来るってよ!」
切島の中では緑谷も含めて爆豪と話していたのだろう。
ごく自然にかかる声は、些か早急になった緑谷の歩みを止めた。
「あっ、そ、そうなんだね」
「じゃんけん俺が1番で緑谷が2番だったろ?
爆豪に自主練場に居るってイチに伝えといてくれって言っといたから、一緒に行こうぜ」
「あ、うん、一緒に行こう」
「よっし、じゃ爆豪行ってくるわー」
振り向かない。
だが、その声に面倒そうに爆豪は片手を上げて応えた。
閉まるドアの隙間からみたその姿に、緑谷の心は何故かモヤモヤしたのだった。