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シュガー・クッキー【ヒロアカ】

第7章  イカれた帽子は兎と歌う




 
 リカバリーガールの治療を受けたからか、すこぶる調子がいい。
 例えるなら窓拭きをした後のガラス位スッキリしている。

 でも木々に止まる蝉が飽きる事なく鳴き続ける事を再認識させられるのは勘弁したかった。
 久しぶりに意識したせいで、耳の直ぐ側で鳴いてるのかって位鮮明だ。

 そういえば晴れが続く今夏は例年より暑い日が続くと、アナウンサーが画面の向こうで言っていたな。
 そして誰かが決まり事の様に唱えんだ。 



『そうですね、温暖化の影響ですね』






18:28

 門を出て少し長い山道を下ると、繁華街の入り口まで早歩きで約5分。小高い山の上にあるのに、立地が良いのは流石は天下の雄英といったところだ。

 流行りの食べ物屋に服屋に娯楽施設。大体の店は集まる盛んな街が通学路。
 爆豪ですら、切島とファミレスに寄って勉強して帰ったりしていたほどだった。

 確かアイス屋は何ヶ所かあったはず。
 女、子供じゃあるまいし、ましてや自分は甘い物より辛い物が好き。アイスはコンビニのアイスで充分なのだ。

 爆豪は曖昧な記憶を頼りにするのを止め、携帯を取り出し調べた。何件かヒットすると、キャンペーン中・TVで紹介された店など、爆豪にとっては煩わしい画面が飛びだす。

 《勝てば何でも連れてってやる》

 お前の勝ちだと言われたが、それはあくまでも相手の反則負けの様なもの。おまけにタイムアップに救われたにすぎない。そんなものは勝ちじゃない。

 現にバトルが終わる直前に受けたボディへの重い1発は、それまで受けていた拳の比ではなかった。
 そして何より個性を使う事すらしなかったのだから。

 言葉には出さない。

 だが【認めてやった】意味も込めて、爆豪はイチを連れだしたのだった。
 当人が分かっているかは定かではないが、小さい頃から自我を突き通してきた彼なりの譲歩だろう。

 目線を画面から離し、もう1度空を見るとジワジワと赤が暗い青に侵食されていた。
 風が強いからか、さっきより空は暗く染まっていた。



18:31
 着いてから決めさせるより、今決めさせよう。
 相澤ではないが、合理性は確かに必要だ。


「ちっ、オイど……」



(今日みたいな空が苦手)


 何言ってんだ、このおっさん。



 人の話は話半分で聞くのが丁度いい。


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