第7章 イカれた帽子は兎と歌う
18:05
―――コンコンッ
ガチャ
「おぉ、爆豪か……何だ珍しいな」
「外出したいんすけど……」
外出許可を取るため、わざわざ教員用の棟に俺は来ていた。
担任は何時もはボサボサの髪を一つにまとめて、ラフな格好。
まぁ、授業も終わって2時間近くも経てば教師だってプライベートだ。
「……、分かった」
何で間をあける。
確かに寮に入ってからは外出した事ねぇし、普段から余程の用がない限り職員室にも行かねぇけど。
そんなに俺が出かけるのが珍しいのかと思ったが、どうやら違ったらしい。
無理やり担任の肩を組むデカイ男が、酒臭い息と共に出てきやがった。
コイツぜってぇ余計な事言いやがった。
「よぉー勝己じゃねぇか!」
露骨に嫌な顔をすると、今度は俺の肩を組む。
言っておくが俺は呑んでないからな。と、担任がドアの縁に寄りかかると、ドアの隙間からB組の担任も見えた。
んだよ、こんな早い時間に酒盛りしてんのかよ。
「……別に呑むのはいいけど、絡むのどうなんだよ」
「全くだな。じゃ、気をつけて行ってこい」
たまに見せる半笑いした顔をすると、担任はさっさと引っ込んだ。
……放任にも程があんだろ、合理性ドコに行ったんだよ。
「いーかげん離せよ。酔っ払ってもねぇくせに気色悪ぃ」
酒臭いが、どー見ても飲まれてねぇ。
馬鹿力のおっさんの腕を振り払うと、急に目を覗き込んで来たかと思えば真剣な表情になった。
「アイス」
「あ゛?」
「イチの1番好きな食いもん」
「そうかよ。俺ァもう行くからなっ」
「勝己」
「んだよっ!いっぺんに言えや!」
「あいつ今くらいの時間……いや、今日みたいな空と人混み苦手だから、行くなら近くに居てやってくれ」
「……」
「あいつ寮に行ってるぜ。じゃ、明後日な〜」
何時もみたいにヘラヘラ顔に戻ると、まだ呑むぜとまた部屋に戻っていった。
……なんだってんだよ。