第6章 手に塩かけてませんから
[ねぇ、ごめんてばー]
[ったく、あいつあれでも健全な男子高生だぞ]
防ごうと思えば防げたが、面白そうだから止めた。
それが本音だった。
いや、多少は悪いと思ってる…。
ただ爆豪の反応は期待以上だった。
[ッフ…良いからコッチでは口にすんな分かったな]
キツく叱られると、イチは誰が聞いても分かってないと思う態度と返事をする。
「あっ!ミッドナイトだ!おーい!」
ウェンウィルに抱えられたままイチはジタバタした。
「あら?今日の訓練は終わったのかしら?」
イチの声に気づいたミッドナイトが2人の元へやってくる。
ヒーローコスチュームではなく女教師な服装。タイトな黒のスーツを着こなし眼鏡をかけていた。
「あぁ、今さっき終わったんだ」
「今日は結構過激にご指導なさったみたいですね」
セメントスに会ったと伺えるその話し方は、18禁ヒーローの名に恥じぬ色気を持ち、オマケに少し棘があった。
「降ーりーるー!」
暴れるイチを下ろすと、降りたイチはそのままミッドナイトに抱きついた。
身長差で丁度彼女の豊満な胸に顔を埋める形になるが、イチも彼女も気にせずただ戯れる。
「ミッドナイト優しい匂いするから好きー」
「あら、ありがとう♡」
互いに顔を合わせると、必ずやる一連の動作であるらしい。
「柔らか……ぐぇっ」
そんなイチを更に彼女に押し付け、右手で彼女を肩ごと抱き寄せウェンウィルは顔を近づけこう続けた。
「オレにもいい加減、その匂い嗅がして欲しいんだけど?」
「あらぁ、この場合の【仲良しのキス】は、教育上よろしく無いので止めて頂けます?
そ・れ・に、匂いならいくらでも嗅がせて差し上げられますけど?」
「つれねぇなぁ」
互いに目は離さない。
困った事に、これも一連の流れである。
「……ッぷは!2人して頭の上で何話してるのさ。仲良くしてよ」
「あら、ごめんなさいね♡」
何事かと2人を見るが、ウェンウィルは先に歩き出していた。
「おら、行くぞイチ」
「うん?じゃあねミッドナイト」
2人を見送るミッドナイトはポツリとこぼした。
「……困った人ね」