第5章 キャンディをどうぞ
3人が出ていくと明日の予定なのか、イチは渡されたファイルを見ていた。
変わらず頭から血が流れている。
保健室に行かなくていいのかと尋ねると「大丈夫だよ」と笑った。
ならせめてと八百万が応急セットを創ると、心配そうな顔をした周りに配慮したのか、イチは大人しく手当を受けた。
思ったより傷は深くなく、多数傷がついた事で大量に血が出ていたようだった。
「一瞬気ぃ失っちゃったんだよね」と手当を受けながらイチはあっけらかんと言った。
「ありがと、百。すごいや服まで作ってくれたの?」
「いえ、でも何か異常があったら保健室にいってくださいね」
「うん、わかった」
そう言って服を受け取り、イチはすばやく上半身だけ着替え始めた。
タンクトップになると見える、肩や腕の古い傷跡は生々しい物が多かった。
「でもよ、結局イチの個性って何だったんだ?」
「なっ、全然わかんなかったよな!むしろ個性ある…んだよな?」
切島と上鳴が聞くとイチは「あるよ。教える?」と尋ねてきた。
全員が聞きたいと言うと、先程のバトルを例に説明し始めた。
「個性は【重力操作】かな?
お茶子と違うのは自分の周りのを細かく操作するって事かな」
「操作する?」
「うんとね、自分の体にかかる重力の向きを変えるんだ。常に体の周りにある↓からくる圧を↕、↔、↗とかにね。
だから前にパッてかけると、攻撃を弾けたり出来るんだ。
で、攻める時は、拳や足に集めて重さを足して攻撃する。
更に重いのは、先に→で相手の体に圧の壁を作り←で圧をかけてサンドイッチすると、力がダイレクトに入る」
「拳や足に集める…?」
「よく分かんないけど体の周りの重力を10としたら体全体を1にして9(←)を拳に集めて、それを風…圧?(→)の力で包み込んで打つ感じかな。
アー…OK、見せた方が良いかな?
鋭児郎、硬化した状態で相手してくれる?」
「お、おぅ」
2人は立ち上がると少し離れた。