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シュガー・クッキー【ヒロアカ】

第4章  持ち続けるべきこと




「よぉ、出久」


 緑谷は自主練から寮に戻る途中、ベンチに座っていたウェンウィルに声をかけられた。
 訓練とは違う無地の黒のTシャツに、迷彩柄のズボンにブーツ。
 聞かなくとも軍人だったと窺える位しっくりする服装だった。

 無意識にかまえると、気まずそうな表情をして、とって食ったりしないから座れよ、と男は手招いた。
 言われた通り座ると、男は右手で自身の頬を掻きながら「出久、俺が怖いか」と、緑谷を見ずに尋ねた。

 覚悟したあの瞬間、ヒーロー殺しや敵と対峙した時と同じ印象だった。
 しかし最初こそ空気が強張っていたが、午後の授業が始まるとすぐにそれは殆ど無くなっていた。

 理由は分かる気がした。
 人柄も含め、男の教える内容は理にかない、何より楽しかったからだ。
 今自分の横に座る人の纏う空気は穏やかだ。
 そう緑谷は感じていた。
 だからこそ「はい、怖いです」と本心を伝える事にした。

 そう伝えると「それでいい」と、男は緑谷を見て安心したような顔をした。
 暗くても緑の瞳は綺麗で、電灯の灯りで長いまつ毛が影になって顔に落ち余計にそう感じさせた。

 何故そんな事を尋ねるのかと聞くと、本当はもっと軽くやるつもりだったのにやり過ぎたと。
 そう言ってウェンウィルが足を組み直すとベンチが軋んだ。

 イチとは本当に親子じゃないんですか?と緑谷が尋ねると、コブ付きだと女と付き合いづらくなると笑って、まぁ周りが言うには育ての親……らしいけどな、と付け加えた。
 暫く軽く話しをすると、癖なのか緑谷の頭を撫でて男は立ち上がり言った。


「オレさ、あんま手加減とかすんの好きじゃねぇんだわ。
だから今日はマジだったぜ。
だから怖いってのは褒め言葉だ。
怖いって気持ちは無くすな、緊張感は何時も持ってろ。
 
俺らの事も信じすぎんな、素直過ぎて……心配になるからよ」


 なんで僕にそんな事…緑谷が言いかけると「抱いた女にゃ優しくピロートーク…男の嗜みだ。じゃ、明後日な」そう告げて右手をひらひらさせて暗闇に消えていった。
 1人残された緑谷は、しばらく座ったまま考えこむ仕草をした。

(何だかオールマイトに会いたいな……)


 

「……ピロートークって何だろう」

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