第3章 狩るもの狩られるもの
「いいタイミングだぜ、消太」
「ったく……ドライアイだから、早くしてくれっつったでしようが」
聞き慣れた声が近づいてくる。
両側にいた爆豪と轟が突然地面に押さえつけられると、自分は【男】に担がれていた。
事態が把握できず緑谷が固まっていると、後ろに控えていた上鳴とお茶子も同じく放心していた。
「いい目だったぜ、出久」
担がれた腰を数回叩かれ、ゆっくり地面に降ろされると、目の前には髪を逆撫でた赤い目の相澤がいた。
「暴れるなよ爆豪」そういうと相澤の髪と目はいつもの気だるさを取り戻した。
捕縛が緩められると、轟が冷静に捕縛布を外すのとは対象的に、爆豪は乱暴に取り払い、立ち上がるとすぐさま【男】と間合いを取り叫んだ。
「……ッんの真似だ!!!」
「だーからやり過ぎだっつったのにぃ……」
ため息混じりの声がした。離れた所にいた小さな【彼】は腕を頭の後ろで組みながら傍観していた。その顔は何処か不満そうだ。
「何だよ、お前だって同罪だからな」
【男】は逞しい腕を組むと、どんぐり眼で自分を見上げる緑谷にただ微笑んだ。
その様子を見てもう1度【彼】は、ため息を吐くと、辺りを見回し一際大きな声で何処かに向かって叫んだ。
「根津ー!根津ーー!!いるんだろー。出てきて説明してよ〜」
―――ピンポンパンポーン♪
デパートのお知らせ音みたいのが鳴ると、地響と共に柱の一部が動き中から根津が、やぁ!と現れた。
ますます意味が分からず驚いている生徒をよそに
「実は【悪魔の共闘コロッセオ】手動なんだよねぇ……」と呟きながら、根津は飲んでいた紅茶を飲み干し腰を上げた。
散っていた生徒も集まりだすと、入り口の方からブラドに連れられたB組、その後方を飯田と葉隠がミッドナイトに連れられて歩いてきた。
程なくして、1年生全員が【悪魔の共闘コロッセオ】に集結した。