第3章 狩るもの狩られるもの
おかしい。
この施設は校舎とあまり離れていない。
そのうえ1番速い飯田を向かわせたのに
─ 【まだ】来ない!?
緑谷出久は考えた。
もしかしたら他に仲間がいて捕まったのだろうか。
しかし【もしも】に備えて、元から透明人間である葉隠も2重で向かわせたのに遅過ぎる。
そして【彼ら】は大人しく捕まり過ぎている。
それは即ち【自分達を脅威と思っていない】事に繋がる。
瞬きすら危険な行為に感じ、更に不気味さは増した。
心拍音は頭にダイレクトに届き続け、轟の氷で冷えた空間は間接的に5人の体を冷やし続け体温を奪っていくばかり。
(―――何が目的なんだ)
「ねっ!こっからどうするの!!!」
一瞬の静寂を縫うように響いた甲高い声は、3人に隙きを作らせた。
―――――乾いた音が鳴り響く
(((氷が!!!)))
氷の割れる美しい音が鳴るのと同じく、考えるよりも速く、捕らえていた【獣】は緑谷との間合いを一気に詰めた。
同時に背後で捕まえていた【彼】は素早く離れる同時に、隠し持っていたナイフでお茶子の絶縁シートを裂いた。
まずい……!
気を取られた、緑谷の初動は遅れた。
致命的ともとれる失態。
そんな緑谷を守るべく、爆豪と轟はとっさに個性を発動させる。
(ッ……間に合わねぇ!)
(やるしかねぇ……!)
((考えてる暇なんてねえ!!))