第15章 蝕まれた先の咆哮
『―― ねぇ、イチちゃんお願いがあるの。
もし勝己が元気なさそうだなって思ったら【活】入れてやってくれない?』
『【かつ】?って何?』
『えーっと、こう……元気になれー!とか、頑張れ!って言葉にしなくても伝える為の【おまじない】みたいなものかな。
良くドラマとかでやってるのは、こう背中を叩いてあげたりとかしてる事が多いわね。
それと水で顔を洗ったりとかすると、気合いが入ったなって気持ちになりやすいの』
『へぇ……分かった!いいよ!』
『良かった、ありがとう。
あら、勝己戻ってきたみたい、じゃあお願いね。
あ、あの子にはこの事ナイショね?』
………
……
…
「(光己のジェスチャー)これ位のスピードだったし……うーん、タイミング?」
「ブツブツブツブツほざいてんじゃねぇ!!さっさと降りてこいや!」
「もぉーうるさいなぁ。分かった、よっ!」
「――!!?」
個性を解いたことによる急降下か。
反応した時には、既にイチの手が爆豪の頬に添えられていた。
「特別ね」
その束の間。
跳ね上がる水しぶきと、真っ直ぐに自分を射る青い眼。
自身の周りにあった水が自分を軸に一瞬で外側へはけた。
明るくも暗くもない空を吸い込んで舞う水しぶきが、ゆらゆらと陰を二人に落とし、天地をひっくり返した。