第15章 蝕まれた先の咆哮
個性は使い方次第。
プロヒーローが脚光を浴びるようになってから世間で囁かれる言葉だ。
どれだけ扱いが難しくても、弱個性でも単純な個性でも鍛錬した分だけ柔軟になる。
【神野事件】での個性【ファイバーマスター】ベストジーニストが良い例だ。
繊細な技量が要される個性を手足以上に扱う姿は、最悪の敵・オールフォーワンですら「相当な練習量と実務経験ゆえの強さ」と彼を称す。
強固性でも使う奴のさじ加減1つでどうにでもなってしまう。
宝の持ち腐れになってしまうのかは本人次第。
それ程に個性は磨く程に光る事ができる訳だが
「なんでそんな怖い顔してるの?」
「……ふざけた真似しやがって何のつもりだ」
「だから元気になるおまじない。【活】ってやつ」
「何をどーしたら、こんなんで元気になるんだクソがっ」
たちが悪いとはこの事だ。
どこの誰だか知らないが、いらない入れ知恵をしたらしい。
背中を押す行為こそ【活】をいれるの一般的な例ではあるが、限度がある。
「えー、だって光……」
突然話す事を止めたイチ。
順番に両手で自身の口を覆うと大きく左右に頭を振って黙ってしまった。
「ア゛ァ……?」
随分と分かりやすい黙秘に納得のいかない爆豪は、バシャバシャと水を突っ切ってイチに詰め寄った。
しかしイチは階段を上がるみたく、更に上へ行ってしまい伸ばした手は空をきるだけであった。
「っの野郎、降りてこいやアァ!!」
「……何であんなに怒るんだろ?
ちゃんと言われた通りやれたと思うんだけど…