第15章 蝕まれた先の咆哮
――轟の体が揉みほぐされていた同刻
少し固めなソファーに腰掛け、自分の置かれている状況にソワソワして仕方無い緑谷出久は校長室にいた。
「訓練の後で疲れている所悪いね。
今美味しい茶葉を貰ったんだ、どうぞ」
「あ、ぁありがとうございます。いただきます」
目の前に置かれたカップから湯気が立っている。
授業が終わると、同時に現れた相澤により呼び出された校長室。
何をしたんだと言わんばかりの飯田と、心配する麗日達をよそ目にわけも分からず慌ててやって来た。
中へ招かれると根津は紅茶を淹れる途中で、ソファーへ通されウンチクを聞かされる事数分。
以前はオールマイトと一緒だったが、一人きりだと緊張せずにはいられない。
おまけに急いだせいで、水分補給もそこそこで喉はカラカラ。
出来るなら冷たい方が嬉しいなんて思いながら、促されるままひと啜りした。
「……美味しい」
その甘く上品な香りとまろやかな味は、殆ど紅茶を嗜むことのない緑谷も満足させる代物であった。
熱すぎず適温で提供された紅茶は飲みやすくスイスイと喉を通り、確かな満足感をもたらしたのだった。
「この茶葉は本来ミルクティーにするのが一般的だけど、特に上質な物はストレートで飲むのもオススメなのさ」
「へぇ、八百万さんも寮で良く飲んでいますけど、同じ茶葉でも色々飲み方があるんですね」
「そうさ、元は一緒でも何一つ同じとは限らない。
全てが唯一無二なのさ。
創られた物に限らず生き物、個性、世界はどれだけ勉強したとしても知らない事で溢れているんだ」
「そう……ですね」