第15章 蝕まれた先の咆哮
人と接する事によって起こる変化。
何度となく訪れていたであろうそれを意識するようになった期末試験。
相手がいるから成り立つ事を相澤から諭され、八百万に許しを貰えた事で思考は広がりをみせた。
ただ今は首の座りたての赤ん坊と同じで、その次に進むにはまだ時間が必要で。
でも謝罪の言葉を口にするのは違う気がしていた。
「よっしゃー!オイラいっちばーん!」
腕を高々に上げ到着した峰田。
その後ろから峰田の個性【モギモギ】によって足止めをくらった上鳴と瀬呂が、不満を漏らしながら二人三脚の要領で何とか歩いてきていた。
「お、戻ってきたな。
じゃぁ、焦凍ちょっとばかし寮行って、先に帰った他の奴等にも来たい奴だけ来いって伝えといてくれ」
頼んだぞと、でかい掌がポンと轟の頭を揺らす。
騒がしくなった場を後に出口に向かいながら、釈然としない面持ちで思わず伸びた手は轟の髪を掻きあげたのだった。
「チクショー!峰田お前ずりぃぞ!」
「個性禁止なんて言ってないだろ?オイラの作戦勝ちって事だぜ☆」
「そうだな、実戦だったらズルいも何もねぇからな。実にしてやられたな、二人とも」
一方、更に釈然としない様子の上鳴と瀬呂。
床に座り込みながら、ベットに腰掛け得意げに自身を見下ろす峰田へ野次を飛ばしていた。
個性の違い、体格の違い、不足している部分を補い不利な勝負に如何にして勝つか考える事。
それも蓄積出来る盾であり矛。
それは遊びのうえであっても、泣き虫で弱音を吐いてばかりだった峰田の成長を感じられる場面であったのだった。