• テキストサイズ

シュガー・クッキー【ヒロアカ】

第15章  蝕まれた先の咆哮




「ま、今日は教えてやったストレッチして早く寝ちまえよ」


 仮免は数日後に迫っている。
 その為にも1日置きにある、必殺技の微調整をする予定だった。
 ただ連日ギリギリまで自主練しているのも事実。
 疲れも溜まっている自覚はある。
 その証拠にこの通り肩を痛めかけているわけであって。

 思わぬ指示にすぐには頷ずけず、轟はつい曖昧に濁そうとしかけると、男は目の前でしゃがみ込むと少し下から真っ直ぐに目を見て話し出した。


「ってのは、あくまでも提案だ。
でもな、少し休んだくらいで駄目になる様な鍛え方してきてねぇだろ?
少なくともこの数日間で俺はそう感じた。
やってきた事は必ずお前の力になってる。
まぁ、たまには力を抜いたってバチは当たんねぇと思うけどな?」


 この目線で話すのは初めてで。
 訓練していても常に足元に転がるのは自分で、普段から自分より遥かに背の高いこの男は見上げる事しか出来ない。
 だからなのか、その姿は自然と轟の頭を縦に振らせたのだった。
 
 

「ああぁーー!!!何!?何してんすか!」

 
 静かだった空間に、騒がしい音が響く。
 ガチャガチャとモップらしき物を手にした上鳴が、少し離れたところから仁王立ちして叫んでいた。
 するとその後ろから峰田と瀬呂も顔を出すと、設置された簡易ベッドに峰田がやたらと反応を示すのであった。

 轟がかいつまんで説明すると、3人は自分達にもと涙ながらに懇願し始めた。
 昼間の一件で、ハウンドドッグから罰として訓練場の器具の掃除を命じられ何時も以上にクタクタだと……。
 ウェンウィルの足元にすがり付いて頼む姿は、切実を体現して然り。
 

「わーった、わーったって。順番にやってやるから、まずはその手に持ってるの片付けてこい」

「「「うっしゃーー!!!」」」


 根負けした様子でウェンウィルが両手を挙げると、喜々とした3人は我先にと走り出していった。
 

「んだよ、元気有り余ってんじゃねぇか、なぁ?」


 そんな事だと思ってたとばかりに、男は場を整えながら振り返ると、轟は少しだけ申し訳無さそうな顔をしていた。
 授業は終わり断っても良い筈なのに、自分の相手をしていたが為に手間を取らせてしまった。
 それが少しだけ感じられたからだ。

/ 129ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp