第14章 虚しさは拭えない
ただ想定していた以上にソレは、爆発している所に爆弾を足す行為だったようで。
珍しく理不尽ではない暴君の怒りに、事態は悪化の一途を辿る事しか出来無いとみえた。
「ナカナカ楽シゲト見エル」
頼みの綱のエクトプラズムはマスクで目が見えていないのかと疑いたくなる事を放つ。
一体あれを見てどこをどうしたら楽しげに見えるというのか。
そもそもこの場に居るのが相澤やハウンドドッグだったら、この地獄絵図にはならなかった気すらしたが、そういえば祖父が好んで聴いてた演歌で言っていた。
人生色々、男も色々、女だって色々。
って事は、ヒーローも色々、教師も色々だ。
オールマイトと相澤の考え方が合わない様に、緑谷と爆豪のヒーロー像が違う様に、外見も考え方も人は皆違う。
ルートは幾重にも木の枝みたいに伸びて分かれて、行き着く先は最後まで分からない。
だからこそ人は迷って悩むのかもしれない。
(…って事はこうやってウジウジすんのも必然……ってこ
―――っ瀬呂おぉ!!」
――!?
不意に名前を呼ばれ身体が肩ごとビクンと大きく揺れる。
「おまっ、お前高みの見物決めてねんじゃねぇぞぉッ、ァあぁ……!!」
阿鼻叫喚。
視線を向ければ、丁度峰田がもぎもぎを爆豪に投げつけて爆破されている所だった。
その姿に思わず吹き出してしまうと、更に自身の名前を怒り混じりに連呼された。
鼻水も涙も混じらせてるのに、あの峰田が逃げ癖がなくなったのは、これまでの修練の賜物か。
何にせよ、彼がヒーローへと近付いているのは確かなようで、そんな姿がやけに誇らしく感じてしまう。
自分が参戦した所で大した事が出来るとは思わないが……いや、そんな事はどうでも良いのか。
明日は頬が筋肉痛になりそうな予感。
重い腰を上げてエクトプラズムに会釈すると弾ける様に走り出す。
(そうだよな……オレってば、ヒーローになりたいんだよ)
自分が思ってる以上に物事はシンプルで。
自分がどうなりたいかなんて自分しか分からない。
だけどそれが分かんなくて苦しくなる。
でも人生そんなもんなんだろう。