第14章 虚しさは拭えない
惨めが雪が降るみたいに脳内に積もる。
BGMはドンマイコールだ。
(なんだよ……俺も同じ事しようとしたって事か)
ドンマイ。
それは雄英体育祭で轟にいとも簡単に敗れた時に会場を一体にして巻き起こった言葉。瀬呂の代名詞だ。
ふと前を見やると怒鳴る事にも疲れた爆豪がその場で腰を下ろしていた。
(……俺なら敵に拐われて、そこで終わってたかも)
普段見られない暴君の姿が余計に現実を遠くさせた。
人付き合い含め、大抵の事に関してそれなりに器用な方だ。
中学までの通信簿には‘’明るく誰とでも仲良く話せています‘’と必ず添えてある位。
勉強はそこそこだが運動は出来た。
それこそ優勝出来ないけど入賞とか。
体育祭がいい例だ。
ベスト16には入るけど表彰台には届かない。
あの日のドンマイを、笑い話にする事で消化したつもりになっていた。
何故かあった根拠の無い自信は、自分じゃ無理なんだと安易に悟す。
言うだけは簡単。
大切なのはそれを実現する為に最善を尽くしているか。
失敗しそうだとか、うまくいきそうだとか、今なら無敵って何となく分かるもので。
結局それは今迄の上に成り立っていて。
簡単に言えば、積み重ねてきたはずのものに胸を張れていないだけだ。
期末試験は散々で、合宿では追試で、今の自分を武装させるモノが何て少ないんだろうと。
そんな事に気づいてしまった。
強化訓練も必殺技の訓練も真剣にやってるつもり。
焦りたくない。
でも意味ある経験をしないと経験値は得られなくて。
例えそれが危険な事だとしても飛び込まなきゃ変われないんじゃないのか。
そうやって目の前の事に嫉妬して、卑屈になって勝手にそうだと決めつけた。
自分より劣ってると安心したくて。
後出しジャンケンみたいにぐちゃぐちゃ言い訳が出てくる。
現実を感じないこの感覚はなんなんだろう。
視えない壁が自分だけを隔離していく。
「……俺、ダッセ」
小さく吐き出した言葉が、海の底に鉛でも落としたかのように脳内に沈んだ。