第14章 虚しさは拭えない
「エクトプラズム……」
「手ヲ、降ロシテイイト思ウゾ」
行き場すら無かった手を瀬呂は慌てて引っ込めると、エクトプラズムも伸ばした左手を降ろした。
「彼ガ不安ソウニ見エタカ?」
問いかけに数秒の間を置き、去った影を追って頬を一搔き。
今となって伸ばしかけた理由を考える。
明るく振る舞う姿を見たから余計にその姿に同情しそうになったのか。
否。
ヒーローとは然るべき教育を受け、必要な資格を取得し、国に認可された者が自身の個性を駆使して人々の生活を守る奉仕活動を行う現時代の人気職。
資格のない者が公の場で個性を乱用する事は法律で禁止され、被害を出した場合はもれなく敵(ヴィラン)として警察やヒーローに補導される。
必要な資格の正式名称は【ヒーロー活動認可資格免許】
ただ、これから挑むのは【仮免許取得試験】
仮免を取得すると、非常時にのみプロがいなくとも個性の使用が許されるのだ。
例え仮免の立場であろうが1つの力である事は変わり無く、後に瀬呂達1年生も行く事になるが、ヒーロー科にも職場体験とは別にインターン制度がある。
学校を通じてプロヒーローから要請が入り現場へと投げ込まれ揉まれながら、個性と精神を鍛える一石五鳥にはなるカリキュラムだ。
故に常に本番。
プロになる為には突然己の身を危険に晒す事を日々受け入れなければならない。
それを目の当たりにし、単純に不安そうな顔をみて声をかけそうになっただけなのだ。
ただ何と声をかけるつもりだったのだと言われたら、正確な答えが見つからない。
《「大丈夫ですか?」
「頑張ってください!」
「大丈夫ですよ!」》
「(……何か無責任感すっげぇな)
……その何かスンマセン」
「何故謝ル」
「いや先輩に対して俺みたいなのが心配するとか、失礼だと思っ、て……」