第14章 虚しさは拭えない
「ナンダ何故コンナニ此処ニ集マッテイル」
人混みに紛れて美女ウォッチングを始めた峰田と上鳴の鼻と目尻の垂れ下がる中、少し離れた所から少々くぐもった声が瀬呂の耳に引っかかる。
趣味のカラオケと個性「分身」で鍛えあげられた肺活量はプロヒーローNo.1?「不屈の男」エクトプラズムだ。
ウィル達の授業とは別にある「必殺技の開発」を受けているからか、聞き慣れつつある特徴的な話し方につい耳と目が傾く。
相変わらず体の大部分を包み隠す立襟付きダブルボタンマントに禍々しいフェイスマスク。戦闘で失った脚を補う義足。
見た目が敵っぽいランキング常連なのも少々頷けてしまう。
(あっつくねぇのかな……って、あれ?)
周りを見渡すとその場にいる何人かの上級生に分身をしたエクトプラズムが話しかけていた。
そして皆その場を急いで後にし、校内へと入っていく。
「分かりました……。至急向かいます」
「我等教師ハ諸君等ノ活躍ヲ願ッテイル。
ダガ無事ニ帰還スル事ヲ忘レルナヨ」
「……勿論そのつもりです。エクトプラズムこそプロになったら一緒にカラオケ♬忘れないで下さいよ?」
そんなやり取りをしてから、一緒に居た友人と二言三言話してその上級生もその場を後に。
(……多分緊急要請……だよな。にしても、あんな大人数に出動要請って何かあったのか?)
そして瀬呂は何気なく前を通り過ぎる姿を見て、気づいてしまう。
小刻みに震える身体。不安と緊張が滲む表情を。
「あっ……」
―――…
無意識に伸ばしかけた手は横から伸びてきた手に静止された。
「心配無用」