第1章 Chapter1【おいでませ、非日常】
「………………」
「………………」
気 ま ず い 。
どうしよう、物凄く気まずい。
相変わらず毛利さんはそっぽを向いたままで、向かいのソファーに座る私を見ようともしない。
あの服が不味かったのかと思って長袖長ズボンに着替えたんだけど……うーん……何とかしてこの空気を変えないと気まずさのあまり息が詰まってしまいそう。
なにか、良い話は……あ、そういえば。
「毛利さん、お腹は空いてませんか?簡単な夜食とか昨日貰ったプリンくらいしかないですけど」
「…………ぷりん……?それはもしや、先程の……」
どうやら毛利さんが見ていたテレビに何らかの形でプリンが映っていたらしく、顔を背けたままとはいえ話に食いついてくれた。
……この話題なら気まずさを打開できるかもしれない。
そう思った私はすぐさまソファーから立ち上がり、冷蔵庫からプリンを二つ取り出して毛利さんに手渡すした。
勿論、食べるためのスプーンも欠かさずに。
「…………………………なんぞ、これは」
くるくると指先でスプーンを回しながら、スプーンとプリンを交互に見つめる毛利さん。
……もしかして、とは思っていたけれど……
毛利さんはプリンの食べ方を知らないのかもしれない。
「えっと……こんなふうにベリっと開けて、このスプーンで中のものを掬って食べるんですよ」
毛利さんに説明しながら、私は目の前でプリンの蓋を剥がして中のプリンを掬って見せる。
……うん、甘くて美味しい。
その一連の動作を見た毛利さんはどこか不満そうな表情をしていたけれど……私と同じように蓋を剥がし、プリンをスプーンで一欠片掬ってそっと口の中へと入れた。
「…………………………」
「……ど、どうですか?」
「………………悪くは、ない」
そう言って毛利さんは一口、また一口とプリンを口の中へ入れていく。
まだ出会ったばかりだけど、毛利さんの性格だと嫌なら食べるのをやめてしまいそうだし……この反応は、美味しかったってことかな?
もしかして毛利さんって、俗に言うツンデレってタイプだったり……?
「……そのヘラヘラとした締まりのない阿呆面で、我を見るでないわ」
「うぐっ……!!」
なんて辛辣な言葉……!!
仮に毛利さんがツンデレだった場合、ツンのレベルが高すぎませんか……!!?
