第1章 Chapter1【おいでませ、非日常】
「……毛利元就、さん……」
私が大きく溜め息を吐けば、水面がちゃぷんと音を立てて揺れる。
ここは私の家のお風呂だ。
毛利さんのせいで忘れていたけど、本来家に帰ったらすぐにお風呂に入るつもりだったんだよね。
そう思いながらお湯に浸かって数分。温かいお湯が心身ともに冷え切った身体を温めてくれるような気がしたが、実際に温まったのは身体だけだった。
あの後、全身緑の男性は「毛利元就」と私に名乗った。
どこかで聞いたことのある名前だと思い調べてみれば、なんと戦国時代の武将様と全く同じ名前。
でもネットの写真を見る限り全然違うから、漫画とかゲームのキャラクターなのかなーと思う。
あんなにも美しい顔だしね。
で、そんな毛利さんと一緒に住むことになった私。
お金はまあ、貯金があるから大丈夫。
男女がひとつ屋根の下で……っていう問題については、 毛利さんが「貴様を?……フッ、我はそこまで飢えておらぬわ」だなんて嘲笑ったのでそこも大丈夫。
ちょっと泣きたいけども。
「とりあえず、毛利さんに服を買って……それから、あの巨大な刃物も……」
あの全身緑の服だと目立っちゃうし、あんなに巨大な刃物が見つかったら警察沙汰になってしまう。
物置にでもしまってもらわないと。
それから暫くしてお風呂から上がった私は寝間着に着替え、リビングで待つ毛利さんの元へ向かった。
寝間着っていっても、可愛らしいパジャマじゃなくて半袖にショートパンツだけどね。
リビングに着くと、毛利さんはソファーに座りながらテレビ画面をじっと見ていました。
実は私がお風呂に入る前、毛利さんが何もすることがないのはあれかなーと思ったのでテレビをつけていったのだけれど……
うん、成功だったみたい。
「毛利さん、遅くなりました」
「フン、別に我は気にも止めて……な………、っ!!?」
テレビを見ていた毛利さんに声をかけると、毛利さんはちらりと横目で私を見て……何故か、カッと目を大きく見開いた……って、え?
どうして?
「あの……?」
「……っ、そ……そのような格好で我の前を彷徨くでないわ!!」
「えっ?は、はい……?」
よく分からないけど毛利さんは私の格好が気に食わないらしく、気まずそうにそっぽを向いてしまった。
顔が赤いような気がしたけど……うん、私の気のせいだよね?
