第5章 Chapter5【福引券で運試し】
真剣な表情で私の肩を掴む石田さんと、何故か私以上に真っ赤な顔であたふたする島さん。
そんな二人を交互に見ながら、私はまた夢でも見ているんじゃないかと思い、試しに頬を軽く抓ってみるが……痛い。
どうやらこれは、夢ではないようだ。
「あの……付き合う、とは?」
夢でないなら尚更この状況が理解できない私は、恐る恐る先程の発言の意味を石田さんに訪ねてみることにした。
すると、石田さんはさも当然と言わんばかりに「そのままの意味だが」と私に返し……
「ま、待ってくださいよ三成センパイ!!前々からそうなんじゃねーかなーとは思ってたんスけど!!こういうのは時と場所を考えるべきっスよ!!!!」
「……?左近、何を訳の分からないことを言っている。どこで言おうが同じだろう」
「もっとムードってもんがあるっしょ!?」
「ムード、だと?」
きょとんと首を傾げる上司に対し、必死に島さんがムードの大切さを語り出した。
……しかし、語れば語るほど石田さんは理解できないと言いたげな表情になっていく。
「せっかく顔良し!収入良し!な三成センパイからの告白だって、ムードがなきゃ厳しいってことっスよ!!」
「……私が、告白……?……………っな、な……!!?」
「告白」という言葉に反応し、わなわなと震えながら真っ赤な顔になる石田さん。
ーーあれ?
これは、もしかして……
「ふっ、ふざけるな!!!!私はただ、備品の買い出しに付き合えと言っただけだ!!それ以外の理由など無いっ!!」
どうやら「付き合え」というのは告白の意味ではなかったらしい。
……いや、普通に考えればその意味の方が正しいに決まっているのだけれども……
夢のせいか、私はつい変な風に捉えてしまったのだ。
「って、センパイ!!買い出しなら男手の俺の方が……!!」
「左近、貴様にはまだ仕事が残っているはずだが?」
「げっ!?」
どうやら図星だったらしい。
島さんが引きつった表情へ変わる。
「あぁ、だから私なんですね?」
「いや、それもあるが……」
「……へ?」
「っ、良いから行くぞ!!」
「は、はい!!!!」
問答無用とでも言うかのように石田さんは私の腕を掴み、そのままずんずんと歩き出してしまった。
……佐助さんのお弁当は、後で食べよう……