第5章 Chapter5【福引券で運試し】
「……はあ……」
「苗字センパイ、何かあったんスか?」
幸村さん達が私の家にやってきてから1週間ほど経過したにある日見た、おかしな夢。
いくら夢とはいえ、上司の石田さんや毛利さん達に取り合われるだなんて少女漫画みたいな展開、起こるはずないのに……恥ずかしい……。
そう思いながら、お昼休憩中にため息をついてしまった私に島さんが声をかけてきた。
「いえ、少し変な夢見ただけですよ」
「変な夢?それってつまりホラー系とか正夢系?……あっ、今日もセンパイはお弁当なんスね!!」
「正夢ではないと思いますが……ホラー系といえば、そのジャンルのような……」
ぱかっとお弁当箱を開けながらそう言えば、島さんが興味津々といった表情で呟いた。
ーーそう、最近の私はお弁当を「持って」きている。
この会社には値段もお手頃な社員食堂があるため、前までは朝早くに起きてしまった場合のみお弁当を「作って」きていたのだが……
「……今日も美味しそう……」
綺麗に巻かれただし巻き玉子、可愛らしいタコさんウインナー、にくじゃがにプチトマトの入った和風サラダ。
デザートは……少し独特な形をした、りんごの飾り切りらしきもの。
これら全てが、佐助さん(と恐らく幸村さん)によって作られたものである。
実はこの一週間で佐助さんが「これくらいなら俺様にも出来るから」と、私の代わりに家事をしてくれるようになったのだ。
……私が仕事でいない間の食事をどうしようかと真剣に悩んでいたこともあり、とても嬉しい提案で…………
「ここにいたのか、苗字」
「…………あっ、石田さん。お疲れ様です」
不意に後ろから声をかけられたため、後ろへと振り返れば上司の石田さんが立っていました。
「三成センパイ!!センパイも一緒にご飯食べましょうよ!!」
「………………」
「……って、三成センパイ?」
「石田さん?」
じっと無表情で私達を見つめたまま動かない石田さんに、島さんも私も思わず首を傾げてしまう。
暫く無言の状態が続いていたが、やがて石田さんがゆっくりと私の肩に手を置きーー
「苗字、今すぐ付き合え。拒否は認めない」
「みっ、みみみ三成センパイ!!?大胆すぎじゃね!!?」
…………はい??