第1章 Chapter1【おいでませ、非日常】
私は今、夢を見ているのだろうか。
いや、夢を見ているに違いない。
夢でないとおかしい、おかしすぎる。
そうとしか思えないほど、現状が奇妙だった。
漫画の世界から飛び出してきたかのような巨大な刃物。
全身が目に優しい緑の服を身に纏う、それはそれは美しい顔立ちの男性。
そして、そんな男性に殺されかけている私。
実はテレビのドッキリでしたー!!……にしては、未だにドッキリだと書かれたプラカードを持ったスタッフが出てこない。
そもそもどこにでもいる普通のOLにドッキリを仕掛ける番組なんてあるはずもなく……
「………………早う我が問いに応えよ。だが返答次第では貴様の首と胴体は永久に離れ離れになると思え」
無言の私に痺れを切らしたのか、小さく舌打ちをしながら男性が言い放つ。
ど、どうしよう……とりあえず、何か答えないと死ぬかもしれない……
「っ、あ……私は名前、です…………この家の、家主で……」
「ほう?この奇妙な屋敷の主は貴様か。……それで?我をどうやってここまで連れ去った?」
どこか嘲笑うように口元に弧を描き、ピクっと眉を動かす男性…………って待ってください。
『連れ去った』?
今、連れ去ったって言いませんでした?
「あの、連れ去ったってどういう……?」
「とぼけるでないわ。貴様か、或いは忍のーー」
「っえ!!?忍!!??一体どこの時代の話ですか!!?!」
「……は?」
驚きのあまり大きな声を出してしまった私と、まるでゴミを見るような目で私を見つめる男性。
思えばこの男性、どこか言動が古めかしいというか……変わった口調だった。
それに加え、現実じゃありえないサイズの巨大な刃物に……忍やら連れ去ったやら……
まさか、この人って…………
……別の世界とか別の時代からきたってことなの……?