第3章 Chapter3【お酒は飲んでも飲まれるな】
今日の朝食は毛利さんリクエストのお餅。
お水の入った耐熱皿にお餅を入れてチンすればあっという間にもちもちなお餅が……なんてレシピは置いといて。
そんなお餅に海苔を巻いて醤油をかけるだけの手抜きすぎる朝食でしたが、好評だったようです。
まさかおかわりをされるとは思いませんでした。
「毛利さん、食後のプリンは流石に食べられなーー」
「フン、我が食べられないとでも思ったのか?」
「……食べるのですか?」
私の言葉に「当然であろう」と頷き、プリンを持ってくるよう催促する毛利さん。
……あんなに細いのに、一体どこに入っているんだろう……
思わず苦笑いになりつつも、私は毛利さんに言われた通りプリンを冷蔵庫から取り出して持ってくる。
「……?この前のプリンと違うではないのか」
渡されたプリンを見た毛利さんは眉を寄せながら呟いた。
そう、これはただのプリンではない。
真っ白な生クリームにさくらんぼが飾られた、プリンの進化系……プリンアラモードだ。
「はい、これはプリンアラモードです。せっかくなら色々なものを食べてもらいたいと思って」
「…………ふむ」
プリンを知らなかった毛利さんは、やはりプリンアラモードも知らないらしい。
興味深そうにプリンアラモードを眺める毛利さんを横目に、私はカップの蓋を開けて食べ始める。
「違うのは果物が入っているところで、食べ方は同じですよ」
「………」
そう言うと、毛利さんは私と同じように蓋を開けて食べ始めた。
……うん、ちょっと表情の変化がわかりにくいけど美味しそうに食べているような気がする。
毛利さんの様子に安心した私がプリンを食べ進めると、不意に毛利さんが此方に向かって手を伸ばすのが見えた。
「え?どうし……ああっ!!」
ひょい、と。
毛利さんの手が私のさくらんぼを攫っていってしまた。
「ま、待ってください、それは私のです。最後まで取っておいた、大切な……」
「ほう、そこまで大切ならば我から奪い返せば良かろう」
「うぐっ……」
ニヤリと効果音が出そうな笑みの毛利さんから恐る恐るさくらんぼを取り返そうとするも、「もう遅いわ」と毛利さんが食べてしまったことにより案の定失敗に終わりました。
……気に入ってくれたのは嬉しいのですが、物凄く複雑な気持ちです……
