第2章 Chapter2【上司と私と】
【Side:石田】
ーー苗字の様子がおかしい。
それに気づいたのは昼過ぎ、本日の業務の折り返し地点だった。
「苗字センパイ、体調悪いんスかね?」
どうやら私の部下、左近も様子がおかしいことに気づいたようだ。
今日の苗字はいつもの無駄のない動作が乱れ、顔色もどこか優れない。
苗字は私に匹敵するほど仕事熱心故に、大方体調不良にも関わらず出勤してきたのだろう。
「ただ、さっきセンパイってば仕事帰りに買い物行くって言ってたような……倒れたりとかしたら大変じゃね……?」
「なんだと?」
あの状況で、買い物?
何故苗字が買い物へ行くという選択肢を選んだのかは分からないが、左近の言う通り倒れたりでもしたらどうするつもりだ?
「左近、苗字が買い物をする店はどこだ」
「いや、それは流石に……センパイの家から1番近いショッピングモールとか?」
「……そうか……」
「もしかして三成センパイ、苗字センパイを探しに行くとか?なら、俺もお供するしかないっしょ!!」
……などと、やり取りをしてから数時間。
苗字が向かったと思われるショッピングモールに着いた私達だが……
「苗字センパイどこっスかね……」
「左近!!この騒ぎを今すぐどうにかしろ!!」
「いやいや!!無理っスよ、無理!!」
苗字が見つけるどころか、何故か買い物客に囲まれる始末。
そもそも本当にこの場所へ苗字が向かったのかすら分からないというのに……
「ちょ、三成センパイ!!足!!俺の足を思いっきり踏んで……って、あーっ!!桜木センパイ発見!!おーい!!桜木センパーイ!!」
「っ待て左近!!私を置いて行くな!!」
人混みの先で苗字を見つけた左近が、上手い具合に人混みを掻き分けて前へ進んでいく。
左近の後を追うように着いていけば、驚いたような呆れたような顔をした苗字が……なんだ、この荷物の量は……タクシーでも呼ぶ気なのか?
ならばーー
「苗字、まだ買い物の途中か」
「ええ、後は食料品を……」
「…………ならば、買い物が終わり次第、私の車に乗れ。拒否権はない」
先に手を打てばいい、それだけだ。