第2章 Chapter2【上司と私と】
「でさー、その時の三成センパイってばマジでハンパねーの!!」
「そ、そうなんですね……」
「…………」
食料品を買い終えた私は、一緒に荷物を持ってくれた島さんと一緒に石田さんの車へと乗った。
石田さんの乗る車は黒がベースのオシャレなデザインだというのは見たことがあるため知ってはいたけれど、乗るのは初めてである。
……車のことはあまり詳しくないからわからないけれど、左ハンドルだし普段から大切にしてるのか外も中も艶々で……うん、どうみたって高級車だ。
そんな高級車と上司。
島さんが居なかったら緊張のあまり動けなくなってしまう。主に指紋で汚したり爪で傷つけてしまわないかという意味で。
いや、今もガチガチに緊張しているけれども。
「ーー左近、あまり騒ぐな。苗字が疲れた顔をしている」
車の中に乗るや否や始まった「石田さんの凄いところセレクション」に恥ずかしくなったのか、それとも私を気遣ってくれたのかは分からないが、信号に差し掛かったところで石田さんが止めに入った。
すると島さんは「あー……」と申し訳なさそうな声を出しながら、私に向かって軽くぺこりと頭を下げる。
「そういや、センパイが体調良くなさそうだったのすっかり忘れてた……すいません、センパイ」
「え?」
体調が悪い?私が?
……と、首を傾げたところで今朝から寝不足か疲れのせいかで頭痛に悩まされていたことを思い出す。
「あ、あぁ……実は少し、寝不足で……それで島さんが私を探しに?」
「いやいや、俺じゃなくて三成センパイ!!俺はそのお供ってわけ!!!!ねっ、三成センパイ!!」
「……石田さんが……?あの、気遣ってくださってありがとうございます」
てっきり島さん考案だと思っていたが、彼ではなく石田さんだったらしい。
乗る時にも言ったが改めて運転席の石田さんにお礼を言うと、石田さんは「気にするな」と返してくれた。
「苗字、お前は働きすぎだ。社長のために力を出す姿勢は素晴らしいが、そのあまり身体を壊す恐れがあるなら休め」
「……石田さん……」
「よかったっスね、センパイ!!」
本当に良かった、良い上司に巡り会えて。
この時の私は心から石田さんを良い「上司」として思っていた。
ーー後に知る、石田さんの想いには気付かずに。