第2章 Chapter2【上司と私と】
「うーん」
朝から色々あったけれど今日も無事に定時退社に成功した私は、その足で最寄りのショッピングモールに向かう。
雑貨屋で毛利さん用の歯ブラシやタオルを買い、洋服屋では店員さんに男性物の服をいくつか選んでもらったところまでは良かったのだけれど……
「ちょっと、荷物が多すぎるよね……」
そんなに買うつもりはなかったけれど、いざお店に行けば「あれも必要になるかもしれない」とか「これも……」なんて考えているうちに、ついつい多めに買いすぎてしまった。
これで食料品を買うことになると、歩きで帰るのは流石に無理だ。
「タクシー呼ばなきゃ……って、あれは……?」
次々と重なる出費に溜息をつきながら食料品売り場に向かうと、鮮魚コーナーに人集りが出来ていることに気づく。
タイムサービスでもやっているのかなーなんて思いながら、その横を通り過ぎようとした……
次の瞬間。
「あーっ!!苗字センパイ発見!!おーい!!苗字センパーイ!!!!」
「その声は、島さん?」
ふと、どこからか同じ職場の後輩……島さんの声が聞こえたため、その場で立ち止まって辺りを見渡す。
けれど、どこを見ても島さんらしき姿は無い。
……まさか幻聴ってことは……
「ここっスよ、ここ!!職場ぶりっスね!!」
そう言いながら、島さんは鮮魚コーナーの人集りの中から出てきた。
ーー最近入社したばかりの、島さん。
明るくて元気な人で、私とはデスクが隣同士のため仕事の合間や休憩に会話することが多い。
「左近、店の中で騒ぐんじゃない」
どうやら島さんは石田さんと買い物にきていたらしく、石田さんも一緒に私の前へと出てきた。
……主婦の方々が多いからタイムサービスかと思ったけれど、実際には島さんと石田さんに惹かれて集まったのね。
なんて思いながら二人を見ると、石田さんとぱちりと目が合った。
「苗字」
「……はい?」
「まだ、買い物の途中か」
「ええ、後は食料品を……」
「…………ならば買い物が終わり次第、私の車に乗れ。拒否権は無い」
「は、は……い…………って、はいっ!!?」
な、何がどうなってるんですか!!?
石田さんが……えっ……だ、誰か!!
この状況を説明してください……!!