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とうらぶ 短編たち

第4章 藤 小狐丸


「小狐丸、入っても良いですか?」
部屋の前で大きく深呼吸してから入室の許可を求めると
「どうぞ」
静かな声で返事が。
その声に感情が読み取れなくて、正直怖い。

そっと部屋の中に入ると、なんだか甘い匂い。

小狐丸は部屋の真ん中に座っていて
彼の向かいには座布団。
そこに座れって事らしい。

小狐丸と向かい合うように座ると
「ぬしさまに毛並みを整えて頂きたく」
そう言って私に櫛を差し出すとくるっと背中を向ける。

いつもと比べ物にならないくらいの緊張感で
小狐丸の髪を梳く。
早く終わらせたいけれども、
髪の毛引っ張ったら悪いし…
なんて考えながら手を動かしていたら
「私はぬしさまを好いています」
小狐丸が語り始めた。

「この本丸に顕現し、ぬしさまとお会いして
一目惚れをしたのです。
ですが、新参者の私はぬしさまと長く過ごしてきた者たちにはかないません。
そこで、夜にぬしさまの元へと伺っていたのですが、」
そこまで話すと小狐丸はくるりと私の方を向いた。
「ご迷惑でしたか?」

大きいくせに背を丸くして、
小さくなった小狐丸。
なんだか毛づやも悪く見える。

「迷惑では、ないけど、」
「けど?」

「いや、
小狐丸がどんな性格なのかとか理解しきれてなくて、
どれくらい距離を保って接するべきなのか分かってなくてね、」
「距離?」
「あんまり馴れ馴れしいとそれを嫌う男士も居るから」
そこまで伝えると
「私とはこれくらいの距離で居て欲しいのです」
と、小狐丸は私を抱きしめた。
まるで壊れ物を扱うかのように優しい素振りで
でも、離したくないと言うような
そんな感じ。
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