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とうらぶ 短編たち

第3章 花海棠 にっかり青江


私の不満そうな顔を見て

「せっかくの昼寝は心地良い方が良いだろう?
此処なら君の香りに包まれて眠る事ができる」
そう言いながらストールを鼻に近づけてすんすん。

「匂い…」
「香りだよ、香り」

いや、変わらんだろって思ったけども口には出さず。

「君も昼寝のつもりかい?
僕は目が覚めてしまったから、そうだ!
子守歌でも歌ってあげようか?」

良い事を思いつきました!
と言わんばかりの青江。
「いや、うん。
眠気もどっかにいっちゃったから。
子守歌は遠慮しておくよ」
「そうかい」
…そんなに残念そうな顔しなくても良いのに…。

「君は随分と熱心に僕を見ていたようだけど」
「え?
あぁ、綺麗な顔してるなぁって思って」

青江には嘘を吐いても通用しないのは今までの経験上分かってるから
一応素直に白状する。

すると、青江は不思議そうな顔をして
「僕が綺麗だと言うのかい?」
なんて。

「十分すぎる程に綺麗だと思うけど」
「綺麗と言うのは君のような者の事を言うんじゃないかな?
少なくとも僕はそう思うけどね、花子」

青江は私の右手を取ると、自分の頬に持っていく。

「でも、どこかの誰かじゃないけど
君に愛でられるというのも悪くはないよね」
青江の頬をそうっと撫でてあげると嬉しそうに笑う。
にっかりと、じゃないけど。
本当に、心底嬉しいって顔。

「青江は皮膚が薄い気がする」
「ん?体温が低いとか、そう言う事じゃなくて?」
「なんか、
ちょっとでも爪立てたらすぐ傷ついちゃいそう」

思った事を伝えると
「花子は不思議な事を言うね
まるで僕は桃みたいだって事なのかな?

でも、桃の果実のように甘美なのは花子の方だよね」
言いながら
私の手に唇を寄せて
「ホラ、甘いよ?」
なんて。



「よし、寝なおそうか」
私の手を引いて畳に横になる。
もちろん手を引かれている私も、寝っ転がったんだけど。

そうっと抱き寄せられて
「甘美な夢を見よう?」
甘い誘い文句と共に青江の唇が降ってきた。



『美人の眠り』
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