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とうらぶ 短編たち

第2章 茉莉花 和泉守兼定


そもそも、
和泉守が私にお茶を淹れてくるなんて何かあったのだ。
いつもは堀川君が淹れてくれて、
それを持ってくるのが和泉守の仕事。

「堀川君と喧嘩でもしたの?」

私の首筋で遊び始めた和泉守にそう問えば
「はぁ?
なんで俺が国広と喧嘩しなきゃいけないんだよ」
相変わらずの不機嫌声でそう返ってきた。

「じゃあ、」
「俺が花子に茶淹れたら悪いのか」
「いや、そんな事ないけど。
珍しい事もあるもんだなぁって」

私に回している腕の力が弱まったのを見計らって
和泉守に向き直ってみる。

「なんか、あった?」

目を見て聞けば

「好いた女の好みぐらい知っておきたいだろ」

なんとも気まずそうにそう言われて、
呆けるのは私の方だった。

「悪りぃか」
返事をしない私に和泉守は
そう言って部屋を出ていこうとする。


「好きだよ」

唐突に彼にそう伝えると
障子に手を伸ばしていた和泉守は
バッと私の方に振り向いた。

顔が真っ赤だ。

「な、なんだよ、急に!
いつもそんな事言わねぇじゃねぇか!」

和泉守の長い髪の毛が、
赤くなった顔にかかっていて
その容姿も相まってなんだか色っぽい。

「綺麗だと思うし、
格好良いと思うし、
口先だけじゃなくて行動が伴うところとか、
ちゃんと好きだよ、和泉守の事」

机に頬杖ついて、
立っている彼を見上げながらそう伝えれば
「アンタは、花子は、いつもそうだ。
俺ばっかり余裕がねぇ。

…こんなんじゃ、格好良くねぇ」

綺麗な髪の毛をぐしゃぐしゃとしながら
私の方へ大股で歩いて来る。
目の前に来ると、
ドスンと音がしそうな勢いで座って私を見つめる和泉守。

「髪の毛ぐしゃぐしゃ」
頬杖つくのを止めて、両手を彼の髪の毛に伸ばす。
「せっかく綺麗なんだから」
出来る限り丁寧に髪の毛を整えていると
ガシっと手を掴まれた。

私の左手を唇に引き寄せると、
薬指をちろりと舐めて甘噛みされる。
その姿が絵になるのが凄いなぁなんて考えていたら
「覚悟しとけ」
と。

私が言葉を発する前にお姫様抱っこされてしまい
「ねえ、仕事…」
「うるせぇ」
和泉守はドスドスと大股で何処かへと向かう。

何処かなんて分かってるけど。

仕事は今日中には終わらないだろう。
スイッチの入ってしまった和泉守はなかなか、
手ごわいから。


『官能的』

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