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とうらぶ 短編たち

第2章 茉莉花 和泉守兼定


今日の活動報告書をまとめる手を止める。
書類はほぼでき上がったのだけど、
あと3割くらいで書き終わるのだけど、
集中力がプツリと切れてしまった。

「はぁーー」

深く息を吐き出して、
頭をもう一度仕事モードに切り替えようとしていた時

「入るぜ」
和泉守が部屋の中に入ってきた。

「許可してないんだけど」

「あぁ?
細けぇ事は良いんだよ。
ホラ、茶」

お盆には私専用の湯飲み。
入っているのは緑茶。
湯気が立っている。

「堀川君が淹れてくれたの」
確信めいてそう言えば
「俺が淹れたのは美味くないもんな」
と、つっけんどんにお盆を突き出された。

「…そうは言ってないけど」
お盆を受け取って、お茶をひと口。

「これ、和泉守が淹れたの?」

「…不味いか」
頭をポリポリとかきながら気まずそうにそう言う彼は
自信満々のいつもの様子ではない。

「不味くはないけど。
堀川君が淹れてくれるのと茶葉違うから」

「あ?
あの茶じゃないのか?」
私の返答に和泉守は眉間にしわを寄せて
この本丸にはいくつ茶の種類があるのか云々
ブツブツと言い始めた。

こうなると長いのは分かっているので
お茶を飲み干して湯飲みをお盆に戻すと
また机に向かう。

あと3割。
終われば今日の仕事は終了。

さて、集中
と思っていたらグイっと体を後ろに引き寄せられた。
気付けば和泉守の腕の中。

「おい、恋人を放っておいて仕事か」

機嫌の良くない声で文句を言いながら
私の体をギュウギュウと抱きしめる。

…正直苦しい。

「あと3割。終わったら相手するから」
暗に放せと言ってみたけど、返ってきた言葉は
「知るか」
の一言。

左腕を私の胸の下あたりに回して、
右手で首筋を触ってる。

何を考えてるのか、和泉守は私の髪を耳に掛けると
あいた首筋に唇を寄せてきた。

「跡つけないでよ」

一応注意はしたけど、聞く様子じゃない。
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