• テキストサイズ

とうらぶ 短編たち

第11章 仙人掌 蜻蛉切


明日も明後日も
夜更かしして流れ星を探して、見つけられても
あのスピードじゃ、願い事なんて無理だ。
それに、なんだか、諦めがついた気がする。
「もう、いいや」
思ったよりも清々とした気分で、蜻蛉切に伝えれば
彼は私の瞳を見つめた。
「何を願いたかったのですか?」
改めて私に聞く蜻蛉切。

「ずっと、
ずっと蜻蛉切と一緒に居られたら良いのにな、って」
パチリ
まるで音がするかの様に瞬きをした蜻蛉切。
「夜更かしにつき合わせてごめんね」
恥ずかしくなった私は急いで立ち上がる。
「おやすみ」と言おうとして、言葉が詰まった。

座っている蜻蛉切が私の左手を掴んだから。
えっ!?って思っている内に
音を立てずに立ち上がった蜻蛉切は
掴んでいる私の左手を優しく引いて
私はそのまま蜻蛉切の腕の中に。

「冷えてしまいましたな」
大きな蜻蛉切の腕の中。
逃げ出す理由はないけど、
大人しくして居るには、心臓に悪い。

どうしようって考えている内に
蜻蛉切はその体温を分ける様に私を抱きしめてくれる。
キツく抱きしめられてるわけじゃないけど、
苦しい気がするのは、私の心臓がバクバクしてるから。

「自分は、花子様の傍を離れる気はありません。
誰に阻まれようと、蹴散らすだけです」
「、ありがとう」
私が言えたのはその一言だけ。
「もう遅い。
今日は休みましょう」
溶ける程に優しい瞳に見つめられて、そう言われて、
頷いた私に蜻蛉切は微笑んだ。

私室まで送ってくれて
「それでは、良い夢を」
丁寧に私の頭を撫でながらそう言って去って行った蜻蛉切。
心臓はバクバクしてすぐには寝付ける気がしなくて、
でも、良い夢が見られる気がして。

いつもより寝坊した私を起こしに来てくれたのは蜻蛉切。
ちょっと困ったような顔をしながら
「これからも、宜しくお願いします」
と、深々と頭を下げられた。
私も慌てて彼に合わせて頭を下げて、
顔を上げて視線が混じって、お互いに苦笑い。

思っていたよりも早く眠りについた私は、
蜻蛉切が言ってくれたように良い夢を見た。
目を覚ましても、傍には蜻蛉切が居てくれて。

私の流れ星探しは成功したみたい。


『温かい心』
/ 31ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp