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とうらぶ 短編たち

第10章 苧環 大倶利伽羅


目を閉じる隙も無くて、
なんてこったと思っていたら
大倶利伽羅の舌が私の目を撫でた。
正確には眼球を。
「ひっ」
不思議な感覚がして、驚いているうちに唇は離れていて
パチパチと瞬きを繰り返す私の前には
ちょっと不機嫌そうな大倶利伽羅。
「あ、えーっと、」
「取れただろう」
「え!?」
「目」
大倶利伽羅に言われて気付く。
目が痛くない…!
「ありがとう、」
どうやら彼は目に入ってしまったゴミを取り除くために
あんな事をしてくれたらしい。
お礼を言って、
大倶利伽羅の突然の行動を理解した。

「俺がやる」
ぶっきらぼうにそう言って
私の手から竹ぼうきを奪った大倶利伽羅に
「え、いいよ。
私がやりたくてやってる事だし、」
竹ぼうきを返してもらおうとしたんだけど
何も言わずに
散ってしまった花びらを集め始めた大倶利伽羅。
申し訳ないから、塵取りを持ってちょっと離れたところでスタンバイ。
そんな私をチラッと見て、掃除をする大倶利伽羅。

お互い無言のまま、散ってしまった花びらの掃除をして
無事、地面をキレイにする事が出来た。
「あの、ありがとう」
結局一人で掃除をさせてしまったから申し訳なくて
お礼を言えば
「慣れ合うのは嫌いだ」
いつものセリフ。
「うん、ごめんね」
「だが、あんたが泣いているのはもっと嫌いだ」
「え?」
「俺は勝つ。
あんたを泣かせるような真似はしない」
ポカンと立ち尽くす私の手から塵取りを奪うと
大倶利伽羅は目の前から去って行った。
向かう先には倉庫がある。
たぶん、竹ぼうきと塵取りを片付けに行ったんだ。
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