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とうらぶ 短編たち

第9章 馬酔木 陸奥守吉行


「主は何処へ行きたい?」
ある日、いつものように世界地図と地図帳を見ながら話していれば
唐突に陸奥守は私に聞いた。
「何処、かぁ…」
いきなりの質問で、頭の中にはいろんな地名や観光名所が浮かぶ。
あの国もその国も行ってみたいけれど、
でも、なんか違う気がして…。

散々悩んで
「桂浜」
私がそう答えると、陸奥守は目をまん丸くした。
「高知、行ったこと無いんだよねえ」
「外国じゃのうて?」
「外国も魅力的だけど、今一番って言われたら、桂浜」
「ほうか」
陸奥守は私の返答が予想外だったのか
「ふむ」
と腕を組んで思案し始めた。

「外国でのうても、
花子と行けるなら何処でだって楽しいろう」
少しの沈黙の後
陸奥守は太陽みたいな笑顔で私にそう言った。
「確かに。
陸奥守となら、何処でも楽しいね」
私も大きく頷いて、世界地図に視線を向ける。


「のう、花子の育った所は何処じゃ?」
「え?
えーっと、此処」
地図帳を開いて、指さす。
「わしは此処へ花子と行きたい」
「何にもないよ?」
「構わん。
花子が子供の頃に見てきた物、遊んだ場所
わしも見てみたい」
陸奥守はキラキラした目で地図帳を見てる。

私には少しつまらなく感じた町も
陸奥守の目を通して見たらキラキラ輝くのかもしれない。

たとえ、自由にこの本丸から出歩く事が出来なくても
地図の上だけの旅だとしても
陸奥守となら楽しい。
私はそれだけで満足できる。
もちろん、実際に一緒に行く事ができれば
それはそれで嬉しいし、楽しいだろうけど。

「花子」
大きな手が私の左手を取る。
「まっこと、楽しいのう」
交わる視線は、優しくて
やっぱりキラキラしてた。


『あなたと二人で旅をしましょう』
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