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とうらぶ 短編たち

第8章 西洋花梨 加州清光


「え?何の事??」
私の小さな呟きを清光は聞き逃さなかった。
「薔薇をね、一輪部屋に飾ろうかと思ってたんだけど、
清光が居るから要らないかなぁって事」
「俺、薔薇に勝った?」
「もちろん。
勝負なんてしなくても、清光の勝ちだよ」
私に回されている腕を優しく撫でながら答えると
「俺、主の一番?
花子の一番?」
不安を隠す事も無い声色で清光は聞く。
「清光に勝てる物はないよ」
できるだけ優しい声で答えると
「そっかぁ」
息を吐き出すように、小さく言葉をこぼした清光。

「清光は綺麗だもんね。
この本丸に居る誰よりも。
この本丸に咲くどの花よりも。ね」
「花子の一番なら俺はそれでいい」
「そう?」
「うん」
「私は、清光の魅力を皆に分かって欲しいなぁ」
「俺の事可愛がってくれるのは花子だけでじゅーぶん」
「そっか」

会話を終える頃には、
私は清光に抱きしめられていた。
「清光、」
「なぁに?花子」
「なんでもない」
「なにそれー」
清光の腕の中で下らない事言ったりなんかして。

「しあわせだ」
「俺も」
ぎゅっと力を込めて抱き着けば
同じように清光も腕に力を込めてくれた。
「部屋に戻って昼寝したらダメかなぁ…?」
「うーん。
俺も一緒?」
「もちろん」
「じゃあ、良いよ」

お互い何も言わずに手を繋ぐ。
ゆっくり部屋まで戻る足取りは軽くて
ちらっと横を見れば清光も機嫌が良いようだった。

部屋に戻って、
畳の上に横になると清光は当たり前の様に腕枕をしてくれて。
おかげさまでぐっすり眠ってしまった私は、
同じくぐっすり眠っていた清光と共に
安定にお説教される事になるのだけれど。

あんまり反省していないのは此処だけの話。


『魅力』
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