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とうらぶ 短編たち

第6章 呉藍 巴形薙刀


「主、起きているか?」
久々の本格的な化粧ながら、
なかなかの出来栄えに一人満足していると
外から声がかかった。
巴だ。

「起きてるよー」
「失礼する」
スッと音も無く障子を開けて部屋に入ってくると、
巴は私を見て固まった。

「巴?」

彼はこの本丸に顕現してから「日々学ぶ事が多い」と
審神者である私の後ろをくっついて歩く。
巴が学べるならば、と彼を近侍にしてみたところ
朝一番から私の起床の確認やらご機嫌伺いやらと
忙しく動き回ってくれている。

そんなに気を使ってくれなくても良いんだよ。
と言った事もあるんだけど
イマイチ巴には通じなかったらしい。

そんな訳で、今朝もいつも通り私の元へ来てくれたのだろうけど。

しばらくの後、
ズンズンと私の方へ歩み寄ってくる巴。
なんだか、目が怖い気がする。

「主」
「は、い」
じっと見つめられて居心地悪くて視線を下げたら
そうっと瞼に指が触れた。
そうして、優しくなぞられる。
「巴?」
「今日は、普段の主ではないのだな」
「え?
あぁ、普段より化粧濃いかな…」
「そうは思わないが、何と言うか…」

巴は言葉を区切ると
私に触れている指はそのままに考え始めてしまった。

「こういった時にどのような言葉が適切か俺には分からない。
が、
なんと言うか…」
少し眉間にシワを寄せながら、
巴は言葉を探している。

私に触れている指に、巴の手に触れてみると
「美しい。
普段の主はあどけなく見えるが、
今日の主は美しい」
しっかりと私を見つめながら巴は言葉を紡ぐ。

「俺は驚いている。
化粧とはその様にも姿を変えさせるのだな。

本当に、学ぶ事が多い」
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