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とうらぶ 短編たち

第5章 一初 長曽祢虎徹


ちびちびと月の無い夜に一人酒。
月明りが無いので蝋燭の頼りない炎が唯一の明かり。
昼間の賑やかな本丸も嫌いじゃないけど、
私としては静かな方が息をつける、事もある。

そもそも私はお喋りな方じゃないし、
話は聞くタイプ。
だから個性豊かな刀剣男士たちとも
問題なく過ごせてきている部分もあるのだろうけれど、
発散したい時もある。
そんな時の、夜の一人酒、だ。

アルコールに強いわけじゃないからちびちびと。
この本丸の酒好き達に見つからないように
私は自分の部屋にいくつかお酒を隠し持っているのだ。
見つかったら一瞬で無くなるのは目に見えている。

日本酒よりもワインとか洋酒の方が馴染みがあって、
今日のお供はシェリー。
その中でもとっておきにお気に入りのオロロソ。
私にとっては度数が高めだからちびちびと味わって
一人酒を楽しむ。

月のない夜空は星が綺麗で、
星座なんて分からないけど、眺めているのは楽しい。

「主」

板張りの床が軋む音がしたのと同時に声をかけられた。

「長曽祢さん、」
こんな時間にどうしたんですか?
と続くはずの言葉は彼によって遮られた。
「こんな時間に何をしてるんだ?」

「一人酒を…」
素直に答えると
「横、失礼するぞ」
と、一応の断りをいれて長曽祢さんは横に座った。

「顔が赤いぞ、花子」
長曽祢さんの右手が私の頬を包む。
ひんやりとしていてちょっと気持ち良い。
「酔ってますから」
薄く笑ってまたお酒をひと口。

「何かあったか?」
「何か?」
「その、嫌な事でも…」
言い難そうにしながらも私を気遣ってくれる彼に
「ただの一人酒です。
日頃のご褒美的な」
何の心配も要らない、と返事をする。
「そうか」
長曽祢さんは少し考える素振りをして
「俺も貰おう」
と、唇を重ねてきた。
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