第16章 恋に落ちる音【瀬呂範太】
全員が立ち上がり礼をすると緞帳が下がる
少し待っているとステージ横から楽器を持った生徒達が出入口に向かって1列で歩き始めた
「上鳴、悪ぃちょっと抜ける」
「え!?」
上鳴は予期せぬ発言に驚いた様子だったけど人混みの中あの子を見逃さないために自分も出入口に向かいながら探すのに精一杯で気を使ってる時間はなかった
「あの!」
俺より少し前に体育館から出たあの子を反射的に腕を掴みながら呼び止めた
「あ、ごめん」
「いえ…どうしました?」
近くで見た彼女はステージ上でみるよりずっと綺麗だった
「あ、えっと、、さっきの演奏凄かったです。。この後時間あったらお話出来ませんか」
「……あ、えっと…楽器片付けたり反省会があるので」
「あ〜、ですよね、すみません」
「ああいや、その後でよかったら30分は待ってもらう事になりますけど」
「全然大丈夫です!」
「じゃあ、またステージ見ずらいかもですけどよかったら見てって下さい。うちの学校バンドもかっこいいので」
ニコリと優しく笑うと小さく頭を下げて楽器を持った人の列に戻って行った
(かっわいい!!何あの笑顔、世界救えるわ!!……うわこれ結構ヤバいな)
緩む口を手で覆い誰に見られている訳では無いけど必死に隠す
(まさか他校の文化祭で一目惚れした挙句ナンパって…)
惚れっぽい上鳴に散々言ってきたが今なら分かる。これはどうしようも無い。
恋は落ちるものだとはよく言ったもんだ
出入口に立ったまま何組かのバンド演奏を眺めていると後ろから控え気味に声をかけられる
「あの、お待たせしました」
「お、いや全然」
「ちょっと人がいない所行きませんか?」
「ぜひ」
靴を履き替えて玄関から外に出るとさっきの体育館を横切って奥に進むと小さな小屋の後ろにあるベンチに腰掛けた
「ここいわく付きで人があまり寄らないんですよ」
「え!そーなの?」
「ふふっ私は不用意に近づかせない為に先生達がついた嘘だと思ってますけど、でもこうゆう時は人が本当にいなくていい場所でしょ?」
悪戯した子供みたいな顔で笑う彼女に「うん」と鈍い返ししかできなかった