【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「リヴァイ」
エルヴィンが前方を見つめたまま、最も信頼を寄せる男の名を呼んだ。
「後方へ行け」
奪還作戦の拠点を構築するために欠かせない物資。
それを運ぶ荷馬車は、圧倒的に機動力に乏しい。
援護班には精鋭を含めた7名が控えていたが、それも全滅となれば荷馬車班も機能しなくなっていると考えて良いだろう。
だが、問題はそこではない。
荷馬車班が位置するのは、陣形の中で最も安全な中央部。
そこが落とされれば隊列は事実上無くなり、エルヴィンの統率が効かなくなる。
これ以上の被害は何としても食い止めなければならない。
「荷馬車援護班に加勢したのち、安全を確認し次第、司令部と合流!」
それは、ここでリヴァイ班の一時的な離脱を意味していた。
「了解だ、エルヴィン」
どんなに深刻な状況だとしても、リヴァイは変わらない。
エルヴィンの命令は絶対だった。
「・・・・・・・・・・・・」
一瞬、リヴァイの瞳がサクラを捉える。
“すぐ戻るから心配するな”、そう語りかけているのか。
しかし、言葉を交わすことは無かった。
もう伝えるべきことは伝えてある。
サクラに抱いている想いも、
エルヴィンとハンジに託した想いも。
馬を引いて方向転換をするリヴァイ。
自身の班を率い、無数の信煙弾が上がっている後方へと疾風の如く走っていった。
恐らく、今から行っても多勢に無勢だろう。
まさに死にに行くようなものかもしれない。
それでも最強を誇る兵士長は、恐怖の色を少しも見せない。
そして、そんなリヴァイに一縷の望みをかけるのはサクラだけでなく、その場にいた調査兵団の精鋭全員だった。