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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第13章 Forget Me Not ※





「お兄ちゃんは、どうして調査兵なの?」

ある日、食事の時に何気無く聞いたら、お兄ちゃんは困ったような顔をした。
父は何も言わず、私の頭をポンポンと叩いた。


・・・聞いてはいけないことだったのだろうか。

するとお兄ちゃんはポケットから銀色の金属を取り出した。
手のひらに乗せてみるとお金のようだったが、見たことの無い文字が刻まれている。

「うん・・・? 読めないよ、なんて書いてあるの?」
「お兄ちゃんにも読めないんだ」

お兄ちゃんにも読めない?
だったら、何故そんなものを持っているんだろう。

「これはね、壁の外の世界で見つけたものなんだ」
「え・・・」

外の世界に興味を持つことは禁止されている。
子ども達が学校で最初に学ぶ戒律だ。

いくら調査兵といえど、本来は石ころ一つでも外の世界の物を持ち帰ってはいけなかった。

「外の世界には、僕たちが知らない何かがある。この壁の中に逃れてきた人類がすべてだと思っていたが、そうではないのかもしれない・・・」

壁内では言語、文字、通貨が統一されている。
“読めない”文字は無いはずなのに、これは明らかに人の手で作られている。
それは、外の世界に人間が存在しているということ。

「君の父さんや、僕、そして君の中に流れる東洋人の血は薄い。残念ながら、もはや壁内に純血は一人しかいないと言われている」

お兄ちゃんはシャツの袖をまくると、私に“印”を見せた。
それは父にもあるものだった。

「たとえ“純血”が死んで、東洋人が絶滅しても・・・僕たちの祖先が存在していたという事実は変わらない」

同じように、外の世界には僕たちの知らない文明を持った人間が存在する。
もしかしたら彼らが巨人発生の根源かもしれない。
そうであれば、その事実は変わらないし、現状を変える糸口となるかもしれない。

「それを調べることが罪だとしたら、人類はこの壁の中で絶滅を待ちながら生きていくしかないんだ」

「・・・難しくてよくわからないよ」

なんとなく分かったのは、お兄ちゃんが人間のために憲兵から怒られる事をしているということ。
そして、それが調査兵をしている理由だということ。

「弟は、“人を変える”ために調査兵になることを選んだんだよ」

最後に、父が優しく私の頭を撫でた。



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