第2章 AKAITO登場
そこにいた男は悠長に私の作ったスープを勝手におたまから飲んでいた。髪は真っ赤で赤いマフラーをしていた。私は彼を知っている。KAITOの亜種のAKAITOだ。
「俺も少し気にくわねーな」と彼が口を腕で拭きながら言う。
「唐辛子とかを入れるとピリッとしておいしくなるよ」
想像して確かにおいしそうだなと思う。それ以前にいきなりの登場で言葉が出なかった。
「まあ、君みたいな可愛い女性が作った料理ならどんな味でもおいしいよ」
あまり聞きなれないキザなセリフに反応に困る。
硬直していると、後ろからKAITOに優しく抱きしめられた。
「お前、誰だ」
KAITOがAKAITOに威嚇した。いつも私を避けるKAITOが私を抱きしめてるこの状況の方が今の私にとってドキドキしてならない。
「俺はAKAITOだよ。マスターが俺に会いたがってると思って貴様から抜け出てやってきたんだ」
言っている意味がよくわからなかったが、とりあえず彼がKAITOから誕生したらしい。
「意味がわかんねーよ」
KAITOに抱きしめられて、頭がぼーっとし始めてくる。とても幸せな気分だった。
「あぁ、もしかしてマスターを独り占めしたいのか?バ・カ・イ・ト」
完全なる挑発だった。KAITOの手に力が入る。
「誰がこんなブス独り占めするか!」
ブスという言葉が心に刺さる。でもこの状況でその言葉はあまりにも不適切というか、だったら離してほしいなとか思う。私はKAITOの腕の中から逃げ出した。
「ブスだなんて酷いよ、これだから子供はバカだから」
AKAITOがバカを思いっきり強調させて言う。二人は全く逆の性格で、凄く仲が悪いって聞いたけど・・・
なんでAKAITOが出てきたんだろうか。
KAITOがAKAITOに殴り掛かっている。AKAITOが片手で受け止めていた。
「暴力で押し付ける気か?やっぱりガキだな」
冷静な挑発にKAITOが完全に負けているように見える。
でも、殴っても全て防がれてるし・・・AKAITOの方が断然強いらしい。
ガタガタっという音で場所を思い出した。二人は私の作ったスープの前、つまりガスコンロの前で喧嘩しているのだ。
「ちょっと二人とも!危ないから・・・」と叫んだが遅く、私の作ったスープが倒れて二人にかかってしまった。ともに悲鳴。
