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舞う羽は月に躍る《ハイキュー‼︎》

第8章 螺旋記憶ー従兄妹


手の届かない遠くの人。

けど、俺が真っ黒に日焼けして泥だらけになったりしているのを部屋の窓からじっと見ていたのを知っていたから、俺はある日、羽奏さんをバレーに誘った。

小学4年生の冬のことだ。

俺は他にもスポーツをやっていたけれど、バレーが一番好きだったから。
羽奏さんの身体的にも、バレーは室内スポーツだから日には当たらないし、見てるだけでも楽しいと俺は思ったから、白くて細い羽奏さんの手首を引っ張って、クラブチームに連れて行ったんだ。

その日、羽奏さんは見ているだけだったけれど、あんなにキラッキラした表情は初めてだった。
羽奏の父さんや俺の母さん、父さんに手引きしてもらって、本家の爺さん婆さんの目を欺いて(普段、羽奏さんが余りにも大人しかったから、うまく騙せたそうだ)、羽奏さんが東京にいる残り2日、2人でバレーのクラブチームに通い詰めた。羽奏さんが宮城に帰る前日、羽奏さんはバレーボールに触って、俺にトスを上げてくれた。
只々シンプルなオープントスだったけれど、あれが、羽奏ちゃんが上げた初めてのトスだ。
俺の呼び方も、羽奏さんから羽奏ちゃんへ、羽奏ちゃんから羽奏へと変わった。


宮城に帰った羽奏は、体調面を考えてクラブチームに入ることはなかったけれど、地元の体育館でバレーの練習を始めた。
お互い携帯は持っていなかったから家電を交換して、1週間に一度は電話して、羽奏とバレーについて話した。


その次の正月。
再び東京で会った羽奏のトスは、見違えるほどに上手くなってた。
クラブチームにいたどのセッターより羽奏のトスは打ちやすかった。羽奏のトスで打つと、俺は最強になれた気がした。

「光ちゃん」と呼んでくれるようになった、高嶺の花だった羽奏が、本格的に妹に見えて可愛くて、それでも顔合わせでは、「羽奏さん」「光太郎」と呼ばれ呼ばなくてはいけないのが寂しく感じた。
今時、身分差なんてと何度も思った。本家の爺さん婆さんに言えやしなかったけれど。


それはともかく。
羽奏のトスは、クラブチームを飛び越えて全日本に目をつけられた。
羽奏がバレーに出会って丁度1年後のことだった。

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