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舞う羽は月に躍る《ハイキュー‼︎》

第8章 螺旋記憶ー従兄妹


従妹の天使 羽奏(あまつか わかな)ちゃん。
羽奏の前に、俺の家が中々めんどくさい話をしよう。

俺の家系?は、今時古風な本家やら分家やらが存在している。
"木兎"は分家の中で3番手に入る。本家が"天使"。羽奏の父さんは次期当主候補の筆頭だった。"天使"には、羽奏の父さんと俺の母さん、2人しか子どもがいないから、男尊女卑に基づいた単純な消去法だ。
本家の方は普通、分家の高位の人と結婚するけど、羽奏の父さんは、出張先の宮城で出会った羽奏の母さん(小さな農家の娘である)と駆け落ち結婚して羽奏が産まれた。
本家の爺さん婆さんはそれはそれはお怒りで、でも、本家唯一の男子である羽奏の父さんを勘当することもできず、羽奏の父さんが宮城に住むのを許容したらしい。
第一子が女子だったことや、その時に羽奏の母さんが亡くなったおかげで、羽奏の父さんには見合い話が山ほど舞い込んだらしいが、それを全て断って、宮城に羽奏と住んでいた羽奏の父さんを、俺は尊敬してた。

そんな破天荒?な羽奏の父さんだったけど、本家としては縛られていて、その最たるものが正月の親戚中の集まりだ。顔合わせとは名目だけ、実際は上座に座る本家様に向かってペコペコする儀式が、俺は小さい時から大嫌いだ。

俺だって木兎の長男として、ありとあらゆる礼儀作法なんかを叩き込まれている。
とは言っても、俺の母さんは羽奏の父さんに似て破天荒で、俺の父さんだって大らかな人だから、俺は、ある程度自由時間を与えられていた。
俺にとっては、充分窮屈だったけれど。
まぁ、俺がバレーをやっていたのも、その自由時間のことだ。

あ、羽奏のことだった。

羽奏は現状、"天使"の次期当主の一人娘。将来は分家の高い位の奴と結婚して、婿養子に入ってもらって、本家を継ぐことが定められている。
でも、羽奏は身体が弱かった。未熟児だったし喘息も持ってた。
だからこそ羽奏は、正月の集まりでは蝶よ花よと綺麗な着物を着せられ、豪奢な広い部屋にいるか、顔合わせの時は、羽奏の父さんに抱き抱えられていた。

煌びやかで重そうな着物とか、裾の長いワンピースとかに包まれた羽奏さんの、日に焼けない真っ白な肌とサラサラした黒い髪は、高嶺の花の雰囲気を助長してたと今でも思う。
手の届かない遠い人だ、と。

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