第7章 迷える子羊
悶々としつつも診察室を出て、ぼんやりと受付で座っていれば、程なく呼ばれて、いつも通りの薬を処方されて、さ、帰りますか。
「羽奏ちゃん?」
あら、嫌な予感。
「何でここにいるんですか、及川さん」
相変わらず顔だけはイケメンだな。顔だけは。
「風邪気味かなって思ってたら、岩ちゃんに部活から追い出されて!」
出た、岩ちゃん。
付き合ってんの?って聞きたいけど、岩泉さんに失礼だよね。
「ちゃんと体調管理くらいしてくださいね。それでは」
それだけ言って去ろうとしたが、及川さんは見逃してくれなかった。
「ちょっと待ってよ!
なんで…そんな顔してるの?」
そんな顔?
及川さんが泣きそうに顔を歪めるほど、私は今、酷い顔をしてる?
"何で?"なんて私にもわからないけれど、
「そんなこと気にしなくても、及川さんには関係ないことですよ」
だから、放っておいてくれないかなぁ?
「…そう」
わぉ、珍しい。及川さんがウザくない。
「じゃあ、デート行こ!」
「はあ?」
前言撤回。やっぱりウザい。
「いーじゃん、今日部活ないでしょ?」
何で知ってるの?
影山くんのストーカーだったっけ?
「違うからね!?飛雄のストーカーなんてしてないから!」
声に出てたか。
「そうですか、すみませんでしたー」
「誠意が感じられない!
あ、お詫び!お詫びとしてデート付き合ってよ!」
本当に面倒だな、この人。
でも、うるさい人と一緒にいれば他のこと考えなくて済むかな。
「デートじゃなくて、一緒に出かけるだけですからね?」
どうせなら奢ってもらって美味しいもの食べよ。
「やったーっ!エスコート、期待しとして。
取り敢えず荷物持つから貸して」
はーい、よろしくお願いしまーす。