第6章 1つ先の景色
翌日。
初めて蛍が迎えに来るより早く家を出て、授業をサボってインターハイ3日目、最終日の試合を見に行った。
青葉城西対白鳥沢。
烏野のインターハイは終わったのだから、その試合は、少なくとも"マネージャー"として見に行ったのではなかった。
試合を見ていれば、無意識にノートを取っていたけれど、最早何のためなのかさえわからなくて、
25-22、25-23
セットカウント2-0で県予選の優勝は白鳥沢。
「何か、チームプレイの限界を見せられてるみたいだなっていつも思います」
青葉城西対白鳥沢。
中学の時は、北川第一対白鳥沢。
洗練され、煮詰められた時間差攻撃による連携。及川さんのプレーはチームの最大値を引き出していて、それでも、強い人たちの単純な足し算だけ、もっと言うなら利くんとその他大勢を寄せ集めただけの、戦略なんて関係ないようにさえ見える白鳥沢に勝てたことは一度もない。
青葉城西に、直したいところなんて見当たらなくて、昨日烏野が負けたこととは関係なくても、良い、強いチームだと思うのに。
「今の青葉城西の最大値じゃ白鳥沢には及ばないってことだろ」
隣に座る、つい最近退院したばかりの烏養監督が、礼をする2チームを見ながら呟く。
「今の青葉城西の"最大値以上"を引き出すか、若しくは新たな"札"を投入するか」
どちらも、そう易々と出来ることじゃない。
それは青葉城西次第だけれど。
今のままじゃ青葉城西は白鳥沢に勝てない。
それだけが事実だ。
悔しそうな、でもギラギラした目で前を見据える及川さんを最後に見て、私たちは会場を立ち去った。