第6章 1つ先の景色
「で?」
帰り道、唐突に烏養監督が尋ねてきた。
「学校あるのにわざわざ休んで、しかも俺まで呼びにきて、県予選決勝戦を見に行こうなんて言うくらいだ。何かあるんだろ?」
あぁ、これだから自分が嫌になる。
私の全部を知っていて、全部で頼れる人なんて、もう烏養監督しかいないから、もう"監督"ですらない烏養監督に甘えてる。
「……『バレーに本気じゃない』って言われまして、反論出来なかったんですよ」
上を見れば、嫌になるくらいの青空。
あの日とは全然違うなぁ。
「結局、マネージャーをやってるんじゃなくて、ただ、バレーにしがみついていたいだけなんです」
もう出来ないのに、諦めることも出来ず、かといって本気でやるわけでもなく、無意識だけれど上から目線で分析して、"勝つ"ために出来ることをやったわけでもない。
「そんなの、マネージャーでもプレイヤーでもないです。何やってるんだろうなってわかんなくなって、」
そんなんでも、バレーを手放せない自分が滑稽で。
「…仕方ないとは言わねえよ。
どんなことがあったって、バレーから離れられなかったのはお前自身で、本気でやらねえヤツは好きじゃない。
まぁ、今のお前でも、烏野には必要なんだろ。繋心のヤツが凄えマネージャーだって言ってたぜ。今のままでも、お前の存在価値は充分にあるんだろうよ。
それでも、この前でいいとは思わない」
率直過ぎて痛いこともあるけれど、いつも真っ直ぐな烏養監督に私は救われてる。
「ま、あとはお前が考えて進むことだ。迷ったら背中蹴り飛ばしてやるし、間違えたら頭叩いてやるから、取り敢えず、」
はい。
「部活行ってこい!」
行ってきます。
何が出来るか、どう進むか、何も決まってないけれど、部活にすら行かないのは良くない。……澤村先輩怖いし。
いやー、怖いのは澤村先輩だけじゃなかった。武田先生だった。
普段穏やかな人って、怒ると本当に怖いよね。
「行きますよね!?」
本当に同一人物?
コケてるし、鼻血出てるんだけど。
「東京!!」
先へ、進むために。