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舞う羽は月に躍る《ハイキュー‼︎》

第6章 1つ先の景色


私は知らない。

その翌日、烏野と青葉城西がどんな試合をしたのか。

及川さんの観察も、スガ先輩の頑張りも、影山くんの怖すぎな笑顔も、山口くんの初ピンチサーバー起用も、後からビデオで見ただけだ。
勝ったら戦うことになる、他の会場でやっていた試合を見て、分析して、終わってすぐに烏野の試合会場に行けば、最終セット、日向くんの変人速攻がドシャットされたところだった。
ぼー、と会場を見下ろして、次のチームが入ってくるのを眺めていたら、何故か及川さんが来た。


「ここにいたんだね」

座っている私の前に立つ及川さんは、たった今勝ったはずなのに、凄く不満気な表情をしていた。

「なんで、俺の試合、見ててくれなかったの?」

子供か!と何時もなら突っ込む場面だけれど、そんな気にはなれなくて、及川さんを見上げて口を開く。

「私は、烏野のマネですよ?他校の分析が優先です」

正当で、納得できる当たり前の返答な筈なのに、及川さんは、はっきりと苛立ちを顔に出した。

「それで?今までの試合結果を見た以上の収穫はあったの?羽奏ちゃんの分析による烏野への効果は?
羽奏ちゃんの得意分野は、チーム全体のスキルアップか、そうじゃなきゃリアルタイムな試合分析。それなのに、"そこ"で何してるの?
プレーしてないことについて、俺が口挟むのは違うかもしれないけど、これだけは言っとくよ。少なくとも、今の羽奏ちゃんは、バレーに全力じゃない。変わったよね。俺は、羽奏ちゃん程、バレー大好きで必死な人知らなかったのに。
烏野の人に昔のこと言えなくて本領発揮出来ないなら、ウチに誘おうとでも思っていたけど、いいよ、今の羽奏ちゃんのバレーに魅力感じないから。
……じゃあね」

喋るだけ喋っていなくなってしまった及川さんの背中を見送ることもしないで、そのまま観客席に座っていたら、涙ぐんだ潔子先輩が来て、
「次、持ってこれなくてごめんね」って言われたけど、烏野が負けて、悔しさすら抱かなかった私に言う言葉じゃないと思うんだ、本当に。
それから、反省会をして、青葉城西の次の試合を見て、普通にその試合の分析をして、コーチに連れられて烏野のみんなと一緒にご飯食べた。みんなボロボロ泣いてたのに、涙の一粒だって込み上げてこなかった。
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