第6章 1つ先の景色
気を取り直して。
さぁ、第2試合。
日向くんの変人速攻1発目を見届けて、青葉城西のアップに出てきた面子に目を通す。
「羽奏ちゃーん!見ててくれるんだ!ありがとー!!」
えっと…、帰っていいかな?
「及川てめぇ、何手ぇ振ってやがる!集中しろ!」
ひらひらと観客席に向かって手を振る及川さんの後頭部にボールが直撃。
「痛いよ岩ちゃん!!」
ありがとうございます、岩泉先輩。
及川さんが静かになったところで、青葉城西初戦開始!
ペンをくるりと回して、ノートを取る姿勢を取った時、隣のコートから雄叫びが聞こえた。チラリと視線をやれば、烏野が伊達工業を破ったところだったらしい。
でも今は、対大岬戦。
第1セット
スコアは23-14
及川さんは、本試合、サービスエース連続4本目を完璧なコースと威力で決めて、相変わらず息ぴったりな岩泉さんとの速攻とか、誰にでもピッタリ合わせるトス回しで上手くチームを回して、青葉城西恒例の、築き上げた連携プレーであっという間に試合終了だ。
25-14、25-12
セットカウント2-0で青葉城西は余裕で2日目に駒を進めた。
わかってた。
及川さんは、普段はとってもチャラそうに見えて、事実チャラいし、岩泉さんの言葉を借りるなら「グズ川」だけも、バレーになれば、正直、県で一番戦いたくない相手だ。
利くんの所は、攻撃のパターンが固まっているし、正直、利くん1人の攻略。それもオープントスばっかのスパイクへの対応だ。コースもストレートとクロスの2択。つまんないって言うには、それでも利くんのスパイクは強烈だけれど、それだけ。
いや別に、超個人主義を否定するつもりはないけれど、勿体無いとは思ってしまうのだ。
けど、及川さんは、及川さん自身もサーブとか強みがあって、加えて青葉城西というチーム自体も強くする。息のあった連携、時間差攻撃は本当に魅力的だ。
及川さんのチームは強い。
烏野はまだ、出来たばっかのチームだ。
日向くんの超速攻という攻撃手段は魅力的だけれど、言うならそれしかない。旭さんのスパイクとか、夕先輩のレシーブとかあるけど、全部全部単体でしか機能出来ていない。
何より、影山くんが"王さま"じゃなくなった代償?に、今の影山くんの最終手段はあの速攻しかない。
"勝率"なんて考えるのは好きじゃないけれど、んんー、
「足りないなぁ」